「日本の検察では手に負えない!?」。日産自動車代表取締役会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の電撃逮捕から一夜明けた20日、早くもそんな声が聞こえ始めた。日産は22日の取締役会で、ゴーン容疑者の会長職解任を決める。日産のほか、仏自動車大手のルノー、三菱自動車を束ねたゴーン容疑者は、ワールドクラスの超大物。逮捕した東京地検特捜部にとっては未知の領域で、ヘタを打てば日仏関係にも影響を及ぼす恐れがある。検察内部からは、ゴーン氏の“海外逃亡”を黙認する動きもあるという信じられない話も…。

 有価証券報告書の役員報酬過少記載の疑いで特捜部に逮捕されたゴーン容疑者。差額は約50億円にも上るというから桁違いだ。

 逮捕を受けて、この日の東京株式市場では日産株が急落。一時、前日比6・5%安の940円00銭まで下落し、約2年3か月ぶりの安値を記録した。終値は950円70銭。ゴーン容疑者は日産、ルノー、三菱自動車の3社連合のトップ。逮捕のアオりを受け、欧州市場でルノー株も大暴落し、三菱自動車株も前日比6・85%安の680円で取引を終えた。

 ゴーンショックは世界規模。勇んで逮捕に踏み切った特捜部にとって悩ましいのはここからだ。政界関係者が力説する。

「日本の経営者や政治家を挙げるのとはワケが違う。ルノーはフランスの国営企業のようなもので、今回の逮捕でフランス政府は『今後を注視していく』と宣言している。特捜部がやりすぎれば日仏関係にも影響が出る。落としどころをどこにするかだ」

 ルノーはゴーン容疑者のトップ解任を当面は行わないと、20日にロイター通信が報じた。一方、日本の世論の反応を見ると、ゴーン容疑者を逮捕したことで「特捜部、よくやった!」「日産が生まれ変わるチャンスだ」と好意的な意見を持つ人もいる。だが、特捜部は“超大物”ゴーン容疑者の処遇に頭を悩ませている。そんななか、検察内部ではゴーン容疑者の保釈↓海外逃亡を“容認”する声も上がっているという。法曹関係者の話。

「有価証券報告書の過少申告ということは、脱税がセットになってくる。一般的にウン十億円規模の脱税額なら、立件されれば一発実刑。とはいえ、ゴーン容疑者を刑務所送りにはできないだろう。世論を考慮して起訴はするだろうが、保釈も認められるはず。ゴーン容疑者は直ちに日本を離れるだろう」

 保釈金の歴代最高額はハンナン牛肉偽装事件(2004年)の浅田満元会長の20億円。保釈金は事件の内容や被疑者の資産などによって決まると言われる。財界関係者は「ゴーン容疑者なら史上最高額更新は間違いない。見当もつかないが、50億円以上は堅いのではないか」と話す。

 保釈されると、裁判所の許可があれば海外旅行も可能。保釈金とは逃亡させない“人質”だ。逃げると保釈は取り消され、保釈金は没収。「数十億円をドブに捨てるわけはないだろう」というのが一般的な考えだろう。

 しかし、保釈金を支払ったゴーン容疑者が国内にとどまるとは考えられない。関係者によると、ゴーン氏は妻のいる米国のほか、フランスや幼少期を過ごしたブラジル、両親の祖国であるレバノンなどに不動産を所有する。

 この日、新たに日産の経費や投資資金を流用してオランダ、フランス、ブラジル、レバノンの4か国に不動産を購入していたことが判明。とりわけ国籍を持つレバノンでは英雄扱いされている。逮捕を受け、レバノン外務省は「困難な状況にある彼が公正な裁判を受けられるよう力を尽くす」と異例の声明を発表した。

「言い方は悪いが、保釈されたゴーン容疑者がレバノンにたどり着けば、特捜部は何もできないし、レバノン政府がゴーン容疑者を守ることも考えられる。そうこうしているうちに“なあなあ”になるのが良いと考え、検察側も“海外逃亡”を黙認する可能性がある」(別の法曹関係者)

 これについては警鐘作家の濱野成秋氏も「(検察の一部が)ゴーンをそっと無傷で海外に逃がす準備を始めたと聞く」とした上で次のように語る。

「ここでもし、ゴーンを無傷で国外に逃がしたら、それこそ日本人の恥である。威信にかかわる。勝ち逃げを許すな。国税庁、検察、それから政府の判断ぶりを全国民はしかと確かめようではないか。彼の脱税額は国によっては死刑に値する。日本でも直近の判例をみても実刑50年が妥当だ」

 特捜部のお手並み拝見だ。