【祖父母殺傷】異常供述した中3の心理

2018年10月23日 07時30分

 埼玉県和光市で高齢夫婦が殺傷された事件で、祖母(82)への殺人未遂容疑で逮捕された中学3年生の少年(15)が供述した「許せない生徒がいて殺すつもりだった。家族に迷惑がかかるので、まず家族を殺してからにしようと思った」という衝撃内容が波紋を呼んでいる。その心理状態について、異常性を指摘する声が高まるなか、専門家は「ただの言い訳にすぎない」とみている。さらに少年の性格を「臆病な卑怯者」と分析した。

 事件は18日夕方、和光市のマンションの一室で起きた。住人の男性(87)が刺殺され、妻の女性(82)も重傷を負った。

 埼玉県警は19日、夫婦の孫である中3の少年を祖母への殺人未遂容疑で逮捕。同じマンションの別の部屋で両親と同居していた少年は事件後に行方をくらましていたが、現場から20キロ離れた川越市内で発見された。所持していたカバンには4本の刃物が入っていた。

 祖父は上半身の正面を数種類とみられる刃物で刺され、一部は臓器に達していた。祖母も首などを切られた。不意に背後から襲われた形跡はないという。
 世間を驚がくさせたのは犯行の残虐性だけではない。逮捕された少年の口からあまりに衝撃的な言葉が出たからだ。

「学校に許せない生徒がいて殺すつもりだった。家族に迷惑がかかるので、まず家族を殺してからにしようと思った」

 これが真実なら、異常すぎる思考回路と言わざるを得ない。

 県警は20日、少年を送検し、慎重に背景や逃走経路の裏取りを進めていく方針だ。

 多感な15歳の少年の心情はどう理解すればいいのか。元警視庁刑事で犯罪心理学者の北芝健氏は「14~15歳なら誰でも“殺したい”友達の1人や2人いるもの。その気持ちは本当かもしれない。でも『人殺しの家族にしたくない』というのは後付けの理由。少年はインチキなうそつきと言わざるを得ない」と、少年の供述を言葉通りに捉えるべきではないという。

「多くの触法少年や犯罪少年を見てきた経験から、この少年は弱い人間とわかる。同級生をパシリに使うような不良は、親や兄を殺しても祖父母には手を出さない。弱いおばあちゃんを殺したら、バカにされるのがわかっているからです。この少年は臆病で卑怯なだけ。祖父母との折り合いがうまくいかず、自分の力でも制圧できる祖父母に殺意が向いていたのでしょう」

 少年は犯行中に祖母から「トイレに行きたい」と訴えられると、これを許可したという。祖母はトイレの中で自分の娘(少年の母親)に携帯電話で助けを求めた。

 この行為について、北芝氏は「命乞いを受けたことで、相手に対する優位性を確認した。全く同情に値しない犯罪」として優しさや哀れみによる行動ではないとした。

 少年が逃走中に刃物を持っていたことについては「残りの家族や友達を殺しに行くわけではない。刃物を1本落としたり、欠けさせたときの予備として何本も持っている。自信のない強がり」という心境からだとみる。

 かつて、少年が自分を叱った両親の頭を金属バットで殴って殺した事件があった。

「バットの事件も今回の事件も、いろんな理由はあっても『カッとして殺した』のが大きな理由で同じ。少年は犯行後、その理由にアレコレと付け加えて取り繕っただけ。これだけ弱い人間だと、うそをつき通すこともできない。自分に芯がないから、情報や宗教に流されていくタイプ。そのうち、本当の動機を語りだすでしょう」

 2000年の少年法改正で、14歳から刑事罰を科すことが可能になった。未成年による身内への犯行は、虐待を受けていたなどの同情し得る理由がある場合には減刑されることもある。

 北芝氏は「加害者と被害者の親族である父母や祖母が少年の将来を案じて助けようとすることもあるだろう。しかし、司法は被害者の無念を第一に考えるべき」とも話している。