都心でうごめく地面師「詐取55億円」の行方

2018年10月18日 07時00分

 巨額の儲けの使い道は――。大手住宅メーカー「積水ハウス」が東京・西五反田の土地取引をめぐって約55億円をだまし取られた事件で、警視庁捜査2課は16日、偽造有印私文書行使などの容疑で羽毛田正美容疑者(63)ら地面師グループの男女8人を逮捕した。地面師は詐欺師の中でも儲けが大きいことから“最高峰”とも言われる。しかも、だまし取った金で男たちは酒に女にパァ~ッと使っているというから許せない。

 事件の舞台となったのは東京・品川区の西五反田にある、およそ2000平方メートルの老舗旅館の跡地。JR山手線の五反田駅から徒歩3分ほどの好立地で、資産価値は「100億円はくだらない」という代物だ。

 昨春、積水ハウス東京マンション事業部の男性社員がこの土地を購入するため、地主を名乗る高齢の女と売買契約を結び、約63億円を支払ったが、結局土地は取得できなかったことから同社は昨年8月に被害を発表。羽毛田容疑者は地主の女性(72=当時、6月に病死)になりすましていた。

 同容疑者は男性社員に本物と信じ込ませるために、地主女性の名義で偽のパスポートや印鑑証明書などを作成。あまりの精巧さに公証役場も偽造に気付かなかった。

 羽毛田容疑者らは土地売却後の住まいとして積水側から、およそ7億5000万円のマンションを購入する契約も結んでおり、積水側は土地代金約63億円からマンションの代金を引いた55億円を支払ってしまった。

「地面師グループは劇団みたいなもの。地主になりすます役もいれば、仲介業者役もいる。演技力はヘタな役者よりも数段上」とは捜査関係者。

 詐欺師の世界で地面師は大手企業を手玉に取り、儲けも巨額なことから“最高峰”とされる。今回、羽毛田容疑者のほかに逮捕されたのは、仲介業者を装った生田剛(46)、永田浩資(54)の両容疑者ら8人。全部で12人に逮捕状が出ており、リーダー格のカミンスカス(旧姓・小山)操容疑者(58)は13日にフィリピンに逃亡した。

 仮に全員が逮捕されても、ダマし取られた55億円が返ってくることはまずない。

 主犯のカミンスカス容疑者は昨年末ごろから週刊誌等で事件のことが騒がれ始めても「浅草や錦糸町のフィリピンパブやロシアンパブで豪遊していた。1晩で100万円以上使うこともザラで、何人も女性を囲っていた」(同関係者)というから驚くばかりだ。

 その際、周囲には「俺も羽毛田(容疑者)にダマされた被害者の一人だ!」と、うそぶいていたという。

 捜査の手が迫っていることを知り、フィリピンに向け出国した時も、同容疑者は空港で、報道陣の問いかけに「帰国後に話す」「19日に戻る」とコメント。前出の捜査関係者は「容疑者の元妻がフィリピン人ということもあって、逃亡先に選んだのだろう。現地でいまごろ豪遊しているのかもしれない。逮捕後の段取りを元妻含めた現地の関係者と打ち合わせている可能性もある」と話す。

 儲けた金を遊びに散財するのは、地面師グループの特徴。今回の事件への関与も疑われる大物地面師のXも別件で逮捕後、保釈中にゴルフコンペや六本木や銀座で他の地面師仲間と派手に豪遊していたという。

「彼らの犯罪は、のるかそるか。成功すればボロ儲けだし、バレたら1発アウト。刹那的に遊ぼうとなるのでしょう」(事情通)

 高齢化などから空き家が増えていることに加え、2020年五輪を控え、都心の地価高騰化を背景に地面師たちがうごめいている。