スウェーデンを旅行中の中国人のトラブルが、外交問題化している。9月初め、中国人観光客の親子3人が宿泊予定のホテルに早期到着したため「ロビーで寝たい」と主張し、警察ざたとなり外につまみ出され「人権問題だ」と中国大使館に訴え、両国間で騒動が勃発。そこへ、スウェーデンの公共放送が中国人観光客のマナーの悪さに触れ「食事中にその場で大便をしてはいけません」などと冗談交じりに中国人を批判し、火に油を注ぐ事態に発展している。

 騒動は9月2日未明、スウェーデンの首都ストックホルムで中国人観光客の親子3人が宿泊予定のホテルに到着したことで始まった。チェックイン12時間前だった親子は「ロビーで寝たい」と言いだし、ホテル側は拒否。これに親子はロビーに座り込んだり寝転んだりしながら、泣いて暴れたため、通報を受けた警察が出動し、外につまみ出された。

 日本の高級ホテルでもロビーのソファに平気で横になり眠る中国人を見かけるが、チェックインの半日も前に着いてそれをやられたら、ホテル側が迷惑するのは当たり前。それが世界の常識だろう。

 だが、親子は中国大使館に「人権問題だ」と訴え、同大使館はスウェーデン警察に「中国人の人権を脅かした。謝罪と賠償を求める」と抗議。中国のネットは大荒れとなった。中国外務省は同17日、スウェーデン政府に事件の詳細を調査するよう求めると表明した。

 ところが、同21日にスウェーデンの公共放送「スウェーデン・テレビ(SVT)」がニュースで、今回の動画を導入部として、中国人観光客のマナーの悪さに触れ「食事中にその場で大便をしてはいけません」「犬と散歩している人は、食材を運んでいるわけではありません」などと冗談まじりの内容を伝えた。

 番組で中国の地図が示されたが、中国政府が中国の一部と主張している台湾とチベットが含まれていなかったことも騒動に輪をかけた。

 22日、中国外務省はSVTに厳重抗議し、24日には「メディアの職業道徳に乖離している」と発表。一方、スウェーデン外務省関係者は25日、メディアに「スウェーデンの言論の自由だ」とコメントした。これに対し、25日以降連日、中国共産党機関紙、中国国営の新華社通信や中央テレビなどが「人権問題だ」と猛批判を展開中だ。

 民間人旅行者のトラブルが人権問題、人種問題、台湾問題という大きな外交問題に発展した形だが、中国人ジャーナリストの周来友氏はこうみている。

「世界最高峰の人権意識を持つスウェーデンですが、近年は難民受け入れによって、国の財政や雇用が圧迫され、他民族に厳しい見方や姿勢をとる国民が主流になりつつあるといわれています。今回、スウェーデンの番組が、中国人に対する差別的な発言を放送した背景には、スウェーデン国民のうっぷんが積もっていたという国民感情を代弁する意味もあるのではないか」

 日本でもたびたび問題となる中国人のマナーだが、チェックイン12時間前からホテルロビーで眠りたいという中国人親子も、中国人を小バカにするような番組を放送したスウェーデンのテレビ局も、なんだか違う気がするが…。