三重県熊野市のJR紀勢線の列車で「不審物」が発見され、大騒ぎになった。すわ爆弾か、と思われた段ボール箱の中身がミカンだったことで一件落着となったが、その後を追った。

 15日午後8時半過ぎ、新鹿(あたしか)駅に停車中の列車の運転士から110番通報があった。車両のベンチ型座席下のスペースに段ボール箱があるというのだ。単なる乗客の忘れ物ならば問題にならなかったが、数駅手前で女性が箱を置いてすぐさま去っていった。これは怪しい。5人の乗客を避難させて、県警本部から爆発物処理班が出動した。

 本部のある津市から向かった処理班が現場に到着したのは深夜0時を過ぎていた。恐る恐る開いた箱の中身はたくさんのミカン。一同ズッコケる結末となったが、何もなくて本当に良かったと胸をなで下ろした。

 この騒動で上下線各2本が運休となったものの、JR東海は被害届を出さなかった。17日、県警の広報担当者は「箱に『爆弾』と書いたり、明らかに爆発物のような物を置いたり、あるいは爆発予告があるなら、威力業務妨害事件になるが、利用客も少ないローカル線なのでこういう形になった」と説明する。

 箱を置いた女性の行方も追わない。「無人駅も多い路線なので、知人に渡す運送手段に使ったのかもしれない。臆測ですがね」(同)


 三重県警は2年前の伊勢志摩サミットで鉄道会社の協力のもと、テロ対策を徹底した。列車内の不審物の通報もバンバンあったという。今回の通報も、そのときの名残が少しあるという。

「へき地でテロが起きたとき、対応にこれだけ時間がかかることも分かった。よい機会だった」(前同)

 なお、ミカンは「拾得物」扱いとなり、駅で数日間保管された後に熊野署で預かる。持ち主は責任を問われることはないので、堂々と取りに行くことができるが、めちゃくちゃ怒られることは確実だ。