ブリーフ裁判官“ガバガバ”お口の代償

2018年09月13日 07時15分

 担当していない民事裁判についてのツイッターへの不適切な投稿で訴訟当事者の感情を傷つけたとして、東京高裁が懲戒を申し立てた岡口基一裁判官(52)について、最高裁は11日、懲戒にするかどうかを決める分限裁判を開き、審問を行った。裁判は非公開で、弁護団が明らかにした。審理終結は28日。法曹界が注目する異例の裁判はなぜ行われたのか。

 岡口裁判官は審問後に東京都内で記者会見し、懲戒申し立ての理由が曖昧だとして「表現行為ができなくなる」と話した。現役裁判官が記者会見するのは極めて異例。

 裁判官のインターネット投稿をめぐる分限裁判は初めて。分限裁判は、裁判官分限法に基づき、裁判官の懲戒や免官が妥当かどうかを決めるために開かれる。懲戒相当と判断されれば、戒告か1万円以下の過料が決定される。最高裁によると、これまで懲戒を受けたのは61人で、セクハラや政治活動などが理由だった。

 東京高裁によると、岡口裁判官は今年5月17日ごろ、高裁で判決があった犬の所有権をめぐる民事訴訟に関し、ネットの記事を引用して「え?あなた?この犬を捨てたんでしょ?」などと実名で投稿。元の飼い主から高裁に抗議があった。この投稿が今回の懲戒事由に該当するかどうかが争われるというわけだ。

 2017年12月には、女子高校生が殺害された事件に関連し「首を絞められて苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男」「そんな男に、無惨にも殺されてしまった17歳の女性」と投稿。遺族の抗議を受けた高裁は、今年3月に厳重注意処分とした。高裁は今回の懲戒申し立てについて、3月に処分を受けてから2か月程度で犬の所有権をめぐる民事裁判に関する不適切な投稿を行ったことを考慮したと説明した。

 田口裁判官はSNSなどで裁判や時事問題に関する記事をコメント付きで紹介し、裁判員制度を「国民を騙して導入したものだからね」と批判していた。
 一方、自身のパンツ一枚姿の画像をアップするなどし、物議を醸していた。「自分の裸写真とか、白ブリーフ一丁写真とかも、どんどんアップしますね」。14~16年、ツイッターにこうした内容のほか、上半身を縄で縛られた男性の画像を投稿。裁判官の品位を傷つけたとして、16年6月に高裁長官から口頭で厳重注意を受け、「このようなつぶやきは二度としない」とツイッターで謝罪した。それでも、ネットでは「ユーモアのある裁判官」「面白い」などと肯定的意見も見られた。

 法曹関係者は「女子高生殺害事件へのツイートはあまりに遺族の気持ちを逆なでする。一般人が現職裁判官のモラルの欠如を疑うことになりかねない。その上で愛犬家や動物愛護団体など、ネットでの反応が過剰になりがちな犬についてのツイートですから、最高裁としても岡口裁判官を止めなければならないのでしょう」と語る。

 ちなみに今回問題となった「え?あなた?この犬を捨てたんでしょ?」というツイートだが、詳しくは「公園に放置されていた犬を保護して育てていたら、3か月くらい経って、もとの飼い主が名乗り出てきて、『返してください』 え?あなた?この犬を捨てたんでしょ? 3か月も放置しておきながら…裁判の結果は…」というもの。

 同関係者は「ツイートを読めば、裁判内容のネット記事を要約したもので、元の飼い主に対して現在の飼い主の心情を説明したものと分かります。しかし、読み手によっては岡口裁判官の私見とも読み取れてしまいます。その誤読される可能性を含めて、最高裁としては、もうツイッターをやるなということでしょう。一方、岡口裁判官は表現の自由を主張しているんです」と裁判の構図を解説した。