“サイバー攻撃”61398部隊の正体

2013年02月24日 16時00分

 米国の政府機関や企業のコンピューターに侵入してデータを盗み出したり、内容を改ざんしたりするいわゆるサイバーテロが多発している。19日には米アップルの従業員のパソコンが攻撃を受けた。米紙は「サイバー攻撃の多数のケースに中国の人民解放軍の部隊が関与している」と報じた。その名は「61398部隊」。上海に拠点を置き、英語に堪能でハッキング能力を持つ数千人が、日夜、世界中を攻撃しているという。驚きの実態とは――。

 日本でも総務省所管の独立行政法人、情報通信研究機構(NICT)の調査によれば、日本企業や行政機関に対する攻撃が2012年だけで約78億件もあった。なかでも悪質といわれるのが中国だ。

 米紙「ニューヨーク・タイムズ」は19日、「中国人民解放軍のサイバー部隊が、米国の企業や政府機関に対する一連のハッカー攻撃に大きく関与している」との記事を掲載。これに先がけ、米コンピューターセキュリティーのマンディアント社は「多くのサイバーテロは上海のコンピューターから発信され、中国人民解放軍の『61398部隊』が主導している」と発表していた。

 61398部隊とは、どんな集団なのか。その前に、まず人民解放軍のルーツを再確認する必要がある。

「もともと人民解放軍は“正規軍”として創設された軍隊ではない。武器を隠し持って日本軍と戦う“ゲリラ部隊”から始まったもの。だから非正規戦闘を最初からいとわない。どちらかと言うとアンフェアなやり方で敵を闇討ちする勝ち方を好みます。つまりサイバー攻撃は、人民解放軍の戦術にピッタリはまっており、中国人が最も好む戦いの手法と言えます」と話すのは東アジアの軍事情勢に詳しいジャーナリストの南郷大氏だ。

 こうしたずる賢い軍の中でも“闇討ち”サイバー攻撃に特化した部隊が「61398部隊」というから、始末が悪い。

 同部隊は、拠点を上海の浦東地区に置き、正式には人民解放軍総参謀部第3部第2局という。

「任務の核心部分は国家機密とされています。部隊には英語に堪能で、コンピューターのプログラミングなどにたけた者が数千人所属しているとされる」(前出マンディアント社)

 こんな「61398部隊」が米国に攻撃を仕掛けたとの報道に、中国外務省は19日、「サイバー攻撃を受けているのはむしろ中国。米国の非難は全く根拠がない」と即座に反応。もちろん到底信用できるとは思えない。

「よく知られていることですが、中国はインターネット空間に対する規制や検閲が世界で一番厳しい国。中国政府が“禁句”にしている『法輪功』や『64事件』というキーワードを入力すると、中国のインターネットでは途端に画面が表示されなくなります。それにもかかわらず何度もアクセスを繰り返していると突然、公安局や国家安全部の要員に踏み込まれて逮捕されてしまうのです」

 法輪功とは、反中国政府の立場を鮮明にしている気功集団。64事件とは、1989年6月4日に発生した天安門事件のことだ。

 これほど恐ろしい監視社会では、中国人だろうが外国人だろうが、一般人がサイバー攻撃を仕掛けられるわけがないということだ。

「ハッカー風情が監視の目をかいくぐり外国にサイバー攻撃できるわけがありません」(南郷氏)。軍の介入なしにサイバー攻撃はあり得ないというのだ。

 気になる日本のサイバー攻撃対策だが、なんとも心もとない。対応するのは自衛隊か警察か、それとも情報セキュリティーを所管する総務省か、外務省なのかも明確ではない。縦割りの弊害で全く対処できていないのが現状だ。

 しかも、米国のように攻撃を仕掛けてきたのが何者かをつかむシステムすらない。今後も一貫して関与を否定するとみられる中国政府への対策が急務だ。