山口県東南部の周防大島町で12日から不明になっていた藤本理稀(よしき)ちゃん(2)を15日、3日ぶりに発見したのは、捜索ボランティアとして町を訪れた大分県日出町の尾畠春夫氏(78)だった。

 尾畠氏は現地に到着した14日に、理稀ちゃんの母親ら家族と会い「見つけたら必ず抱き締め、じかにお渡しする」と決意を伝えていた。15日午前6時ごろから単身、裏山に入った。30分ほどで沢沿いに座っていた理稀ちゃんを発見。用意してきたバスタオルにくるみ抱きかかえ、約束通り無事な姿で家族に引き渡した。

 しかし、山口県警などの捜索隊に先んじすぎたためか、理稀ちゃんが発見された際の警察からメディアへの第1情報は「理稀ちゃんが見つかった。その際、成人男性と一緒にいた。男性は近隣住民ではないとみられる」という誤解を招きかねない表現だった。尾畠氏が理稀ちゃんを警察に渡さず、一目散に家族の元に運んだからだ。

 尾畠氏は「大臣が来ようが関係ない。罰を受けてもじかに家族に渡したかった。警察が『渡してください』と来たけど、『イヤです』と言った」と明かしている。

 それは2016年12月、大分県佐伯市で2歳女児が行方不明になった際、捜索に加わった体験からの行動だった。

 女児は無事に保護されたが、すぐに警察が車両に乗せ、走り去った。母親は車を追いかけながら、女児の名を叫び続けたが車は止まらなかった。警察のマニュアルとしては行方不明者を発見し次第、病院に搬送して健康チェックするからだ。しかし、母親としてはまずわが子を抱き締めたいもの。そのため今回、尾畠氏は警察に理稀ちゃんを渡さなかった。

 尾畠氏は66歳まで鮮魚店を経営。リタイア前からボランティア活動に参加し、リタイア後は専念。新潟中越地震、東日本大震災、鬼怒川の堤防が決壊した関東・東北豪雨、熊本地震など、災害が起きるたびに各地へ足を運び、遺品探しや泥かきに汗を流した。

 今回も西日本豪雨のボランティアから、事件を知って駆けつけたという。