“紀州のドン・ファン”こと和歌山県の実業家・野崎幸助氏(77)が5月24日にナゾの死を遂げた事件(本紙昨報)。外傷はなく、体内から検出された致死量を上回る覚醒剤が、死につながったとみられる。この多量の覚醒剤は、どのような状況で使われたのか?

 野崎氏は、自宅の寝室にあるソファで、全裸の状態で死亡していた。第一発見者は、今年2月に結婚した野崎氏の55歳年下の妻・Aさん。発見当時、Aさんと一緒にいた部屋を出て4時間ほど経過していた野崎氏の体は死後硬直が始まっていたという。

 警察は26日と29日、田辺市にある野崎氏が経営していた会社などを家宅捜索。事件と事故の両面で捜査に当たっている。

 まず考えられるのは、野崎氏が自身で覚醒剤を使用したケースだ。覚醒剤は性的興奮を高める作用があり、全裸で死亡していたことからセックス前後に使用していた可能性もあるが、長年交友のある友人は「彼は薬を毛嫌いしていた」と証言する。

 また、昨報のように本紙のインタビューで野崎氏は「セックスは1日5回」と性豪エピソードを明かしつつ、「僕はバイアグラは使わない」と薬物とは無縁だったと強調していた。

 一方、他殺説はどうか。「死体は語る」などの著書がある元東京都監察医務院長の上野正彦氏は「77歳と高齢であることから、高血圧であり心臓が弱っていたのでは。心臓の弱い人が覚醒剤を使用すると、交感神経が刺激され高血圧になり、心臓がバクバクになり心不全になる。野崎氏の体調の悪さを熟知していた者による犯行はある」と指摘する。

 ただ今回のように不審死で、司法解剖となれば覚醒剤が死因だとすぐに足がつく。「殺人で覚醒剤を使うのは、非常にまれ」(上野氏)。警察は妻や会社関係者らから尿検査を行うなど、“覚醒剤ルート”を軸に捜査を進めている。