若者に急増「伊達マスク症候群」

2011年05月07日 14時00分

風邪でも、花粉症でもないのに、マスクを愛用している“伊達マスク”の若者が増殖中だという。彼らがマスクをするのは「人と話したくないから」「顔を見られずに済むから」など、心理的な問題が潜んでいるとか。マスクをしている本人だけでなく、周囲の人もその背景、実態を知っておく必要がありそうだ。

「当院でも患者さんは増えています。伊達マスクだけでなく、室内でも耳まで隠れる帽子をかぶっている患者さんもいます。顔を完全に隠しているのです」
こう話すのは、「美しが丘メンタルクリニック」(横浜市青葉区)院長の児島一樹医師だ。実は、伊達マスクをする人の心理状態の裏には“部分的ひきこもり”があるのではないかと児島医師は指摘する。
「マスクは自分の表情を隠し、相手にも“自分は話したくない”という印象を与えます。これは自分がその場に存在はしても“他人と関わりたくない”という意思の表れともとれ、社会を拒絶した部分的なひきこもりとも言えます」
人間にとって、顔の表情は自分の心や感情を伝える大事な役割を果たしている。しかし、その顔をマスクで覆い隠すということは「自分の表情=感情を悟られたくない。人に見られたくない」ということを意味する。
外にいながら周囲を拒絶し、自らの存在を外界と遮断する。まさに“部分的ひきこもり状態”なのだ。
また“空気読め”社会も元凶だという。
「常に空気を読み、人に合わせることを要求する社会の風潮も原因と考えられます。その場の雰囲気を常に読んで、他人に合わせることをまず一番にさせられ、素直な感情を出して和を乱せば、KY(空気読めない)と言われます。本来、自分の自然な感情が出るはずの表情が、人に合わせるための道具になってしまっているのです」
自分への自信のなさも大きな要因のひとつだ。
「自分に自信がない人は、他人からどう見られるかを気にします。人に合わせようと場の空気を読もうとしてしまいます」
そうした「作り笑い」「作り表情」に疲れた若者が、社会を拒絶する手段としてマスクを選んだとも考えられるのだ。
では、周囲の人々はどのように対処すべきか。
「まずは話を聞くことです。何が不安なのか、何に不満があるのか、じっくり聞いてあげてください。また、自信を回復させてあげることも重要です」
その際には、決してお世辞を言ったり、持ち上げたりしてはいけない。
「“本当のことを言っていない”と敏感に察したり、高すぎる評価に自分を合わせようと無理をさせてしまいます。自然な評価でいいのです。“ありのままの自分でも社会が受け入れてくれる”と感じられるようになれば、自然とマスクは外れます」
なお、人から見られることに不安や恐怖を感じ、日常生活にも支障を来す場合には、社会不安障害(SAD)の疑いもある。心療内科を受診し、適切な治療を受けることが望ましい。
伊達マスク症候群にかかった人々は“空気読め時代”の犠牲者とも言える。「空気を読むことを強要しない、個人の多様性を受け入れる」という社会の理解がより必要なのかもしれない。

【“伊達マスク予備軍”チェック】
①空気を読みすぎる
②作り笑顔が板についている
③他人の評価を気にしすぎるところがある
④現在の自分の状態を受け入れられない
⑤自分を認めてくれない社会に対して不満がある
⑥メールやネット上でのコミュニケーションの方が電話や直接会って話すよりも楽
⑦匿名でのコミュニケーションが多い(=自分の素を出せない)
⑧周囲の人と自然なコミュニケーションが取れない