【なつかしの健康法列伝:牛の脳下垂体がブーム】
1952年(昭和27年)、全国のお医者さんで食肉処理場がごった返す事態が起きた。
というのも、牛の脳下垂体を人間の筋肉に埋め込むと、若返りに効果絶大という噂が広がったから。大学病院の医師から開業医にいたるまで、入手希望者が殺到したという。
施術の具体的な方法は、牛の脳下垂体の皮をむきメスで細かく刻み、細切れになったものを患者の尻の筋膜下に入れ込むというものだったらしい。
若返り希望者(需要)と、処理される牛(供給)のバランスがとれておらず「処理場では牛の頭の奪い合いだった」という記事も残っている。
また、当時の医者の卵は教授から「ちょっと実験台になってみろ」と、やたらめったら尻の皮膚を削られるという悲惨な現象も起きたとか。もちろん、その若者たちが若者のままであるという事実は一切ないが…。
脳下垂体はホルモンのボス的存在。どうやら「ホルモンのボスなのだから、移植すれば若返りに効果があるだろう」というなかなか安直な理由で広まったブームらしい。
もちろん、細切れの皮1枚を移植したところで効果もなければ副作用もなかったようだ。バカらしく思えるブームだが、「若返り」と聞けば何でも飛びつく習性は、今も何ら変わってないような気もしたりして。