ウメはバラ科の小高木。東部アジア温帯原産。「梅はその日の難逃れ」の梅は、梅干しと考えてよい。というのも、梅干しに含まれるクエン酸、リンゴ酸、コハク酸などの有機酸は、だ液や胃液の分泌を増して食欲増進、消化促進に役立つ他、クエン酸は疲労物質の乳酸の燃焼を助けて疲労回復を促す。

 昔の弁当は、日の丸弁当(ご飯の真ん中に梅干しを入れる)に決まっていたが、梅干しの有機酸(特にクエン酸)が殺菌作用を持っているためだ。また、梅干しに含まれるベンズアルデヒドや安息香酸は強力な防腐作用があるため、抗生物質のなかった第2次世界大戦前の日本では、下痢、腹痛のみならず、腸チフスや赤痢にも梅干しを重用していた。

「一日、最低一個の梅干しを摂ると、万病の予防・改善につながる」ことを、この諺は表現している。

 風邪には、梅干し2個を黒焼きにしたものを湯のみに入れ、熱湯を注いで飲むとよいし、二日酔、乗物酔には、梅干しをお茶に入れて飲むとよい。

 腹痛、下痢やそれらの症状を伴う風邪には、梅醤番茶を作り、1日3~4回飲まれると著効を呈す。

<作り方>

 ①梅干しを湯のみに入れてハシでつついて、果肉のみ残し、種子は外へ取り出す。

 ②①にすりおろし生姜5~10滴、醤油小~大さじ1杯(いずれもご本人が旨い!と感じる味)加える。

 ③②に熱い番茶を注いで湯のみ一杯にしてでき上がり。

 ◆石原結實(いしはら・ゆうみ)1948年、長崎市生まれ。医学博士。イシハラクリニック院長として漢方薬と自然療法によるユニークな治療法を実践するかたわら、静岡・伊豆でニンジンジュース断食施設の運営を行う。著書は300冊超でベストセラー多数。最新作は生島ヒロシ氏との共著「70代現役!『食べ方』に秘密あり」(青春出版社)。