歩き続けると下肢に痛みを感じるが、休息すれば症状が消失する一連の症状が特徴の「閉塞性動脈硬化症」。一定の距離を歩くとふくらはぎに痛みを感じたりしびれたりする間歇性跛行という歩行障害が一般的で、発症から1年以内が最も進行しやすいという。男性であることや喫煙などが原因となる同病気の予防法を循環器内科医の大山馨子医師に教えてもらおう。

――どのような症状が出るのでしょうか

 大山医師(以下大山)代表的な症状は、歩くと下肢が痛くなることです。間歇性跛行といって、歩くとふくらはぎから下の方が痛くなります。原因としては、閉塞性動脈硬化症は足の太い血管が狭いことで起こります。歩いているうちに、足の末梢の方に十分な血液がいかなくなってしまうのです。筋肉痛のような感じで足が痛くなり、主にふくらはぎから下にかけて痛くなったり歩くとしびれたりするんです。

 ――休むと楽になるという特徴もあるとか

 大山 はい、歩くのをやめると痛みがなくなります。こういった症状から、よく患者さんの中には脊柱管狭窄症と間違えて受診される人がいます。ですが、脊柱管狭窄症は歩いても痛みがあり歩くのをやめても痛みが治まらないのでその点が違います。閉塞性動脈硬化症の場合、病状が進行している人はほんの少し歩いただけで痛みを感じたりします。

 ――寝ているときに足がつるのも特徴のひとつと聞きましたが、その症状だけでも閉塞性動脈硬化症の可能性を疑うべきなのでしょうか

 大山 寝ているときは、体が脱水傾向となり筋肉に十分な血液がいきわたりにくくなります。それにより足の筋肉が痙攣することでふくらはぎがつってしまうのです。ふくらはぎが痛くなるなどの症状は似ていますが、症状が起こる仕組みがまったく違うので、(それだけで)閉塞性動脈硬化症を疑わなくてもよいでしょう。

 ――ちなみに、ふくらはぎがつるのを改善する方法はありますか

 大山 適度に運動して筋肉量を保つこと。脱水にならないように寝る前に水分補給をしてください。また、ミネラルバランスが崩れることも足がつる原因になると言われています。バランスの良い食事は予防になります。

 ――閉塞性動脈硬化症に話を戻しますと、50代に多い病気とか。そもそもの原因を教えてください

 大山 原因は複合的で、様々な要因があります。男性であることや喫煙、糖尿病、高血圧、高脂血症、腎臓の機能が悪い方や透析の方…危険因子が多ければ多いほど閉塞性動脈硬化症を起こす可能性も高くなります。特にこの病気の人の喫煙本数が増えると最終的に足を切断したり死亡するリスクが上がるとも言われています。これは受動喫煙も同じようにリスクが高まるんです。喫煙者でなくても喫煙者と接する機会が多い方は注意が必要ですよ。

 ――治療法は

 大山 運動療法と薬物療法をまず行います。運動は跛行を生じる強度で歩行し、痛みが中等度になれば休むことを繰り返し、1回30~60分間行い、週3回少なくとも3か月間行うことが推奨されています。薬物療法は血液をさらさらにする薬を内服します。それでも間歇性跛行が改善しない場合、足の血管を広げるためのステントを留置したり、外科的にバイパス手術を行います。

 ――予防法はありますか

 大山 閉塞性動脈硬化症は足の血管の問題だけでなく、全身の動脈硬化と関連があります。喫煙が大きく因果関係があるのでたばこをやめること。運動、体重管理などは危険因子となる糖尿病や高血圧、メタボリックシンドロームなどを防ぐためにも大切なことですよ。既に糖尿病や高血圧、高脂血症にかかっている方は病状を悪くしないように薬を調整するなどしてコントロールしてください。

 ☆おおやま・きょうこ 千葉県出身。循環器内科医として埼玉県内の大学病院に勤務。