【石原結實 食の金言】「百魚譜」(也有)の中に「人は武士、柱は檜の木、魚は鯛とよみおける、世の人の口における己がさまざまなる物好きはあれども、この魚をもて調味の最上とせむに咎あるべからず、糸にかけて台にすえたる男振さえ外に似るべくもなし…」とある。

 結婚式や入学・卒業式…等々、ハレの日の宴食には必ずと言ってよいほど鯛料理が出される。桜色で姿形も美しく、味も淡白で美味だからであろう。「目出たい」にも通じている。「腐っても鯛」というのは「本来、鯛のような秀逸な人(や物)は、たとえ、おちぶれても、古くなり劣化しても、それなりの価値が十分にある」という意味だ。

「千切れても錦」「ぼろでも八丈」と全く同義である。

 鯛は高タンパク(100グラム中20グラム)であるが、低脂肪で消化吸収がよいので、老人や病人、糖尿病、肥満、脂肪肝、高血圧や血栓症(心筋梗塞、脳梗塞)など生活習慣病をもつ人の栄養源として最適である。味が淡白なわりに旨いのはエキス分としてグルタミン酸やイノシン酸などを多く含むためだ。

 高度不飽和脂肪酸が少なく、イノシン酸が分解されにくいので、古くなっても味が落ちないし、腐りにくい。よって「腐っても(古くなっても)鯛」という諺があるのかもしれない。

 ◆石原結實(いしはら・ゆうみ)1948年、長崎市生まれ。医学博士。イシハラクリニック院長として漢方薬と自然療法によるユニークな治療法を実践するかたわら、静岡・伊豆でニンジンジュース断食施設の運営を行う。著書は300冊超でベストセラー多数。最新作は「コロナは恐くない 恐いのはあなたの『血の汚れ』だ」(青萠堂)。