脂っこいものを食べたり、お酒を飲みすぎたときに起きやすい胃もたれ。食事以外にもストレスが原因で起こることもあるという。また、長引く胃もたれは病気の危険性もあるため注意が必要だ。今回は内科医の岡林美紗子先生に胃もたれの予防法などを教えてもらおう。

 ――胃もたれの症状があるとき、胃の中はどうなっているのでしょうか

 岡林医師(以下岡林)胃もたれとして表現される症状には個人差がありますが、一般には胃が重たく感じる症状のことです。食べすぎや胃の動き自体の低下で起きた胃もたれは食べ物が消化されずに胃の中に残っている状態になっています。一方でアルコールを飲みすぎたときに感じるような胃もたれでは、胃の粘膜が傷害されて荒れた状態となっていることがあります。

 ――ストレスで胃もたれが起こるのはなぜですか

 岡林 胃の動きは交感神経と副交感神経という自律神経のバランスで調整されていて、副交感神経が優位だと動きが促進されます。ストレスがたまるとこの自律神経のバランスが崩れ、交感神経が優位となり胃の動きも低下してしまいます。また、通常、胃は胃酸と、胃酸などから粘膜を守る防御因子である胃粘液がバランスよく釣り合っていることで健康な状態を保っています。ストレスによって、胃粘液の産生が減ると自身の胃酸によって胃の中が荒れてしまいます。

 ――加齢によっても胃もたれが起こりやすくなるようですが、中高年は食後、どのようなことに注意すればよいのでしょうか

 岡林 一般的に食べた後にすぐ寝るのは良くないことだと言われていますが、実は胃もたれの症状を改善する方法としては必ずしも悪くはない対策なんです。逆流性食道炎を患っている方などには適していませんが、食事をした後に体の右側を下にしてソファなどで頭の位置があまり低くなりすぎないように横になると胃の内容物をその先の十二指腸へと送り出すのを促すことができます。個人差もありますが、胃の出口は右下側に位置しているため右を下にして体を横たえると消化の流れが助けられます。また、食後の激しい運動や30分以内の入浴はNG。食後すぐに運動や入浴をすると胃腸への血流が減り、食べたものが消化されにくくなるからです。食後は副交感神経の働きを高めるためにゆったりとリラックスして安静に過ごしましょう。

 ――胃もたれがあまりに続いたら他の病気の可能性を疑った方がいいのでしょうか

 岡林 胃もたれなどの腹部の不快感が慢性的に見られるのに検査では何も問題が見られない病気として「機能性ディスペプシア」があります。こちらの診断がついた場合は医療機関で投薬などの治療を受けることができます。そのほかより重大な病気として、胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの病気を患っている可能性もあります。特に注意したいのは胃がんです。早期の胃がんはほとんど症状が現れません。胃もたれは進行した胃がんの症状の一つのサインでもあります。胃もたれなど腹部の不快感が続くようでしたら早めに病院を受診しましょう。

☆おかばやし・みさこ 千葉大学医学部卒業。千葉西総合病院消化器内科で内視鏡検査や消化器内科の診療に従事する傍ら、狛江市にある松本脳神経外科内科クリニックで一般内科外来にも携わる。総合内科専門医、消化器病専門医、消化器内視鏡専門医取得。日本ヘリコバクター学会所属。