【泌尿器科医・高橋亮 シモの話】先週から、タマにまつわるお話をしています。今回は痛み(睾丸痛)とは関連が薄いのですが、タマにできるがんについて解説いたします。

 実は、睾丸にがん(精巣がん)ができても通常、痛くなることはありません。一応、がんの方の10%ぐらいに睾丸の痛みがあるとされていますが、実際に現場で診る患者さんでは、そこまで痛みの頻度が高くないと感じます。

 むしろ、「痛くないのにタマがだんだんと腫れてきた」というのがよくあるがんの症状です。痛みがないので、逆に放置してしまいがち。タマが腫れているという理由で病院に行くのはやっぱり少し恥ずかしいじゃないですか。だからでしょう、「まあ、痛くないし、腫れているだけだからちょっと様子見ようかな」と思っているうちに進行させてしまう場合があるのです。私が見た中で一番大きい精巣がんは、ソフトボールぐらいの大きさになっていました。ここまでいくとたぶん、歩くときなどに相当邪魔だったと思うのですが…。

 少し前に、爆笑問題の田中裕二さんが精巣腫瘍で手術をされましたよね。余談ですが、私は田中さんの東スポの競馬コラムが好きでよく読むので、当時の発表でタマが大きくなったことをネタにして笑い飛ばしていたのを見て、すごい職業魂だなあと感動したのを覚えています。

 さて、精巣がんは、やや緊急度の高い病気です。がんですので早めに治療を行った方がいいのは当たり前なのですが、他のがんと比べて進行のスピードが早いため、診断されてから手術まで1週間ぐらいで行うことが多いです。治療は、片側の睾丸を全部摘出します。手術自体は1時間ぐらいで終わるので1週間程度で退院できるものの、とにかく早めに手術を行うのが大事です。

 タマが腫れてきたのを感じた場合には、痛みがなくても早めに病院を受診していただければと思います。

 ☆たかはし・りょう 神奈川県出身。2003年日本医科大学卒業。日本泌尿器科学会指導医・専門医。日本医科大学付属病院嘱託医。ED、早漏、AGAなどをはじめ、前立腺がんなど泌尿器科にまつわる疾患全般を扱う動坂下泌尿器科クリニック(東京・文京区)院長。