【石原結實 病気を吹き飛ばす食図鑑】江戸時代、初モノ好きの江戸っ子が、ない銭をはたいてでも買ったのが、初夏の「初ガツオ」と初秋の「サンマ」だった。サンマは無理して買ってもそれに見合う十二分な健康効果があったようだ。「サンマが出るとアンマが引っ込む」とか「秋のサンマは孕(はら)み女に見せるな」といわれるほど栄養価と健康効果の高い魚である。

 前者は「秋になってサンマが食卓に出るようになると夏バテも吹っ飛び、肩こりや腰痛もとれる」という意味で、後者は「秋のサンマは栄養がありすぎるので、妊婦が食べると栄養過多になり、かえって体によくない」という意味。

 サンマには「A」(内臓・皮膚・免疫力強化)、「D」(骨・歯の強化)、「E」(抗老化、抗動脈硬化)、「B12」(造血)などのビタミン類の他、質のよいアミノ酸から成るタンパク質、EPA(血液サラサラ効果)やDHA(健脳効果)などの不飽和脂肪酸が豊富に含まれている。

 少々、苦味があるが、腹ワタには「レチノール」が豊富に含まれるので、しっかり食べれば、免疫力向上や抗ガン効果が期待できる。

 サンマのように高タンパク・高脂肪の魚を直火で焼くと、「トリプP―1」などの発ガン物質が生成される心配があるが、ビタミンCはこの発ガン物質に対する解毒作用があるので、焼サンマは「C」の豊富なレモンや大根おろしを添えて食べられるとよい。

 蛇足だが、サンマを「秋刀魚」と書くのは、「細い身が刀のようにキラリと光る秋の魚」という意味が込められている。

 ☆石原結實(いしはら・ゆうみ)1948年、長崎市生まれ。医学博士。イシハラクリニック院長として漢方薬と自然療法によるユニークな治療法を実践するかたわら、静岡・伊豆でニンジンジュース断食施設の運営を行う。著書は300冊超でベストセラー多数。最新作は「コロナは恐くない 恐いのはあなたの『血の汚れ』だ」(青萠堂)。