【現役医師がぶっちゃけ 女医のお部屋】長雨の後に再び暑さがやってきた。冷房を欠かせない日々がまだまだ続きそうだが、ガンガン効かせすぎると、いわゆる冷房病(クーラー病)になる危険性があるという。症状や危険性を内科医の佐藤留美先生に教えてもらおう。

 ――俗に言う冷房病とは

 佐藤医師(以下佐藤)この時期、室内にいるときは冷房で部屋を涼しくしている方が多いでしょうが、冷房が効きすぎてしまうと、人間の体の自律神経のバランスが崩れて体に様々な不調が起こります。

 ――自律神経は私たちの体に備わっているものですよね

 佐藤 その働きによって外の気温に体が対応できるようになっています。しかし、夏場、エアコンが効きすぎているところに長時間いると自律神経の順応(気温の変化に対応すること)が乱れて、体温が低くなり、血液の流れも悪くなります。血液の流れが悪くなると血管が収縮してさらなる体の冷えにつながります。その結果、頭痛やめまい、腹痛などの症状を引き起こすことになります。

 ――そのような症状を放置しておくとどうなるのでしょう

 佐藤 自律神経は体の中で大事な役割を担っており、体の免疫力や様々なホルモンバランスを整えています。冷房病を放っておくと、自律神経が乱れたままになってしまい、食欲不振や吐き気、よく眠れないなど様々な症状が出るだけでなく、改善されにくくなります。冒頭でお話ししたように、血液の流れが悪くなることで免疫力も低下していきます。今は新型コロナウイルスが大流行していますが、そういった感染症にもかかりやすくなってしまいます。

 ――熱中症との違いや見分け方はありますか

 佐藤 熱中症は体温が上がるので、その点が大きな違いです。熱中症も冷房病と同じように頭痛や吐き気などの症状がありますが、冷房病は体温が下がるのが特徴でもあります。もし、自宅にいて体のだるさや頭痛、吐き気などの症状が出た場合は、熱を測ることで、熱中症か冷房病かの判断ができます。熱が高ければ熱中症で、熱が低ければ冷房病の可能性が高いです。

 ――冷房病を防ぐ対策にはどのようなものがありますか

 佐藤 自律神経は大まかに分けて交感神経と副交感神経の2つ。37度から39度のぬるま湯に15分以上つかることで副交感神経が刺激されて、精神的にリラックスすることができ、筋肉がほぐれたり免疫力を高める効果があります。逆に42度以上のお湯につかると交感神経が優位になり、体の緊張を高めるなど逆効果になってしまいます。

 ――ぬるま湯がオススメなんですね。それでも、冷房病になってしまった場合は…

 佐藤 必ずしも病院を受診する必要はありません。冷房病かなと思ったらエアコンをいったん切ったり、窓を開けて外の空気を入れたりすることで部屋の温度を調整してください。冷たい飲み物ではなく温かい飲み物を飲んだり、体を温める生姜や香辛料などを摂取すれば収縮した血管を開くこともできます。ただ、万が一、体の寒さを感じてエアコンを切った場合、それでも寒けが続いたときは自律神経が乱れ体温調整ができなくなっている証拠ですので病院を受診する必要があります。

 ☆さとう・るみ 医学博士。日本内科学会認定・総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本感染症学会専門医・指導医等、2007~11年、佐賀大学大学院で感染症の研究に携わる。現職は「朝倉医師会病院」呼吸器科部長。