【泌尿器科医・高橋亮 シモの話】もしも、射精した時に出てきた精液が真っ赤であれば、とてもビックリすると思います。この精液に血が混じることを「血精液症」と言います。

 ちなみに、射精の時に出てくるのは「精液」であって「精子」ではありません。睾丸で作られるのが精子になりますが、精子単独では活動ができないため、前立腺などで作られた栄養を含んだ液体と精子が混ざってから体外に放出されます。つまり精子+液体=精液ということになります。

 この精液が血の色をしていたら大変に不安な気持ちになるでしょうが、ほとんどの場合は良性の出血であり、1か月ぐらいでおさまりますので大丈夫です。こういった精液の出血のことを「特発性血精液症」と呼びます。なんだか難しそうな名前ですが、翻訳すると「何で血が混じっているのかよく分からないけど、たぶん大丈夫な精液の出血」となります。

 出血の原因については検査をしても不明なことがほとんど。前立腺や精嚢腺という精液の液体部分を作っている場所の炎症や感染による出血、射精時のいきみの時の小さい血管からの出血、精子の通り道に腫瘍や石がある…などが原因だといわれています。検査の結果、炎症や感染が疑われる場合には薬を飲んでいただきます。

 多くの場合で良性の血精液症ですが、まれにがんが見つかることがあります。中年以降の患者さんの場合には血液検査でPSAという前立腺がんの腫瘍マーカーを測定。血精液症でがんが見つかる可能性は高くないのでそれほど心配はいらないものの、症状が続く場合や中高年の方で精液に血が混じった場合には一度は病院受診をお勧めいたします。性行為については、血精液症で性交を行っても女性パートナーに悪影響を及ぼすことは基本的にありません。ただし、感染がある場合にはうつしてしまうこともあるため、少し性交を控えるか検査を受けていただければと思います。

☆たかはし・りょう 神奈川県出身。2003年日本医科大学卒業。日本泌尿器科学会指導医・専門医。日本医科大学付属病院嘱託医。ED、早漏、AGAなどをはじめ、前立腺がんなど泌尿器科にまつわる疾患全般を扱う動坂下泌尿器科クリニック(東京・文京区)院長。