【泌尿器科医・高橋亮 シモの話】性病の診察を行っているクリニックは自費診療(自由診療)と保険診療の2種類がある…という話を少し前にいたしました。個人的には検査や治療に大きな差はないので、一般的に高額になる自費診療よりも、保険診療のクリニックで十分だと思っています。

 では、自費のクリニックは高いばかりで全くメリットがないのでしょうか? もしそうであれば、自費のクリニックは世の中から淘汰されてしまうはずなので、自費ならではのメリットもあります。その中で最も大きいのは健康保険を使った記録が残らないことだと考えられます。

 毎年、年初に健康保険組合から「医療費のお知らせ」という書類が届きます。前の年に通院した医療機関の名前と医療費が書かれているのですが、内容を家族や職場の人などに見られるのがイヤな人は、自費診療であればこの書類に記録が残ることがないのです(まあ、そもそもこの書類を他人が開封して見てはいけないのですが…)。

 ただ、医療費のお知らせに書かれているのは、病院名と医療費のみですので、病名、検査、薬の名前などは一切わかりません。また、サラリーマンの多くが加入している社会保険の場合、医療費のお知らせは一般的には職場に届きますので、職場で捨ててしまえば家族には見られませんね(苦笑)。国民健康保険の場合は普通は自宅に郵送されてきます。

 自費診療の他のメリットは検査結果をネットやメールで見られるなど、通院しなくても済む病院があるので便利だったりします。ただ、保険医療機関の場合は検査結果も来院が原則ですが、昨今のコロナ禍の影響もあり、電話で検査結果を教えてくれるクリニックも少しずつ増えています。私のクリニックでも健康保険を使って検査を行い、結果は電話での説明という診療を行っています。

 このように、保険診療と自費診療それぞれの長所と短所を理解したうえで病院選びを行っていただければ、トラブルは少ないのかなと思います。

 ☆たかはし・りょう 神奈川県出身。2003年日本医科大学卒業。日本泌尿器科学会指導医・専門医。日本医科大学付属病院嘱託医。ED、早漏、AGAなどをはじめ、前立腺がんなど泌尿器科にまつわる疾患全般を扱う動坂下泌尿器科クリニック(東京・文京区)院長。