「そろそろヤバイんじゃない?」「ちょっとキテるね」。職場などで飛び交うこんな言葉にギクッとする人も少なくないだろう。実は最近、30代から薄毛対策を始める人が増えている。AGA(男性型脱毛症)治療の駆け込み寺として、今年9月に本格開院した日本初の男性総合医療クリニックの院長に、現状や治療法、早めの対策による効果などを聞いてみた。

「当院にいらっしゃる年代で、一番多いのは30歳前後の男性なんです」

 こう話すのはAGA治療などで月間約6000人が通院する「メンズヘルスクリニック東京」(東京・丸の内)の小林一広院長。実際、同院の来院患者では30代が約37%と最も多い。40歳を過ぎた人が中心かと思いきや、世の男性たちは早めに“始動”しているようだ。

「年を重ねると周囲にも似たような状況の人が増えますが、若いとそうもいかない。国民性もあるでしょうが、『みんながあるのに自分だけない』というのはやはり、気になるところです。また、特に頭頂部などは、他人からの指摘があったとしても自分では見えづらいので、疑心暗鬼になるんですよね」

 近年、AGA治療の存在が広く知れ渡ったことで気軽に専門医の門を叩けるようになったことも大きい。当院で希望日時に新規の予約を取るとなると2か月程度待つというから、いかに多くの男性が通っているかが分かる。では、早めの治療は効果が高いのだろうか。

「個人差はありますが、やはり高齢の方と比べれば効果が出る可能性は高いでしょう。傷は浅いうちに手を打った方がいい。例えば、松井秀喜元選手と王(貞治ソフトバンク球団会長)さんのどちらを現役に戻すのが簡単かという話です」

 同院の初診の流れは、まず専門スタッフによるカウンセリングを行い、治療の流れや費用に関する概要説明を行う。

 その後、治療希望がある場合は検査等を行った後、専門医がしっかりと診察をする。

「薄毛には医学的な定義がありませんから、どのぐらいを薄いかと感じるかは人それぞれ。とはいえ、ご自分の髪の様子を写真などでご覧になり『やっぱりか…』『あちゃ~』という方は多いですね」

 治療方針などに納得すると、塗り薬などの外用薬や内服薬を使用し、通院は月に1回程度。同院のアンケート調査では、患者の8割が満足だと回答しているというが、これには薄毛改善に加え、その他の要因も関係している。例えば、発毛によって人生が変わることがある。「どうせ俺なんか…」と引っ込み思案だった男性の性格が明るくなり、女性と交際、結婚に至るケースもあるのだ。

「不安を持って生きていて楽しいことはない。逆に、不安を払拭できれば、気分も人生も前向きになることもあります」

 治療で髪が生え、悩みの種がなくなって元気に→3段腹も何とかしたい!とジムに通いだす→オシャレをしだす→夜の街に繰り出す…なんてケースも出てくる。

「私はそれをカミノミクスと呼んでおります。一人で悩みを抱え込んでいるのなら、専門の医療機関で自分の現状や医療的にどういうことができるのかを知るのも大切。それにより、希望の光が見えることもあるのでは?」

 若いうちに…というのも納得だ。