在宅ワーク増加により腰痛に悩まされる人が増えている。原因には様々な事柄が影響しているようで…。整形外科医の古賀昭義先生に聞いた。

 ――最近、増加している相談はありますか

 古賀昭義医師(以下古賀)私のクリニックでは昨年から続く新型コロナ禍において腰痛、頸部痛、肩こりを訴える患者さんが増えています。特に腰痛なのですが、テレワークが増える中、長時間、パソコンの作業に適さない椅子や机で仕事をしている方も多いのではないでしょうか。たとえば椅子の座面が柔らかすぎたり、机が低すぎたりといったことが要因になっていると思われます。

 ――ぎっくり腰なども増えているのでしょうか

 古賀 ぎっくり腰に関しては硬いフローリングにじかに座り、長時間PC仕事をしていたとか、ソファで仕事していてそのまま居眠りして起きたら腰が痛かったというお話も聞きます。こういった方を診察して背中を触診すると傍脊柱筋(ぼうせきちゅうきん)という背骨に付着している筋肉の左右差が認められる方が多いです。どちらかに傾いて座っていることで左右の筋肉の緊張が異なり痛みを発生するパターンです。

 ――正しく座る必要があると

 古賀 座り方に関しては理想の姿勢を意識することが大事です。座ったときに耳の穴から真っすぐに下ろした線が肩関節、股関節の中心を通るように座ることをイメージします。

 ――椅子はどのように選べばいいでしょうか

 古賀 まず、この姿勢を実現するにはソファのように柔らかい椅子は不適合です。腰痛予防の椅子には骨盤をサポートするものや、骨盤を後傾させて腰を前弯(ぜんわん)位にして負担を減らすなど、いろいろなものがあります。とはいえ、自身の体形や脊髄、骨盤のバランスで適した姿勢を取れる椅子は異なります。テレワーク用の椅子も最近では量販店などにも様々出ていますが、実際に試して「正しく座れる」椅子を見つけましょう。

 ――ほかに、腰痛の原因として注意することはありますか

 古賀 中高年男性の腰痛の原因の大半はメタボです。特に新型コロナ禍において、体を動かせないことで体重増加となり、結果として腰痛を発症する方が増えています。実際に1キロ増えることで、椎間板にかかる負荷は4倍の4キロになります。2キロ増えると8キロ、3キロ増えると12キロという計算になります。

 ――そんなに負担がかかるんですね!

 古賀 このことを伝えるとビックリされる方も多いのですが、そのため腰痛を訴えて来院される方には「まずは痩せてください」とお願いしています。腰痛に関しては痩せることで症状改善につながる方が圧倒的に多いです。運動の種類や食事療法など方法は何でもいいのですが、一定期間続けることが大事です。3か月続けても効果が出なかった場合は自分に合わなかったと考えて、ほかの方法も試すようにするといいのではないでしょうか。また、座りっきりもよくありません。1時間テレワークで仕事をするならば、最後の10分間は体操を行うようにしましょう。

 ☆こが・あきよし 東京都出身。1996年医学部卒。医学博士、整形外科専門医、抗加齢医学専門医。2007年に開業。著書に「身長が2cm縮んだら読む本」(秀和システム)、「院長はなぜ始発から2番目の電車で出勤するのか?」(ライトワーカー)など。