【注目! 令和の健康新技術】患者が口や鼻などからの分泌物を自分の力で十分出せない場合に、モーターなどで吸引して取り除く――そんな医療機器「吸引器」のディスポ(使い捨て)機能の効用と、技術的メカニズムに迫る。

 吸引器は、用途によって必要な吸引力が異なってくる。たんや唾液、鼻水などの分泌物の粘度が異なり、粘度が低ければ吸引力は弱くてもいい。三幸製作所の電動式吸引器「ミニックS―Ⅱ」「W―Ⅱ」では、後者のほうが吸引流量では1・5倍ほど強い。

 家庭での介護用は吸引力が弱くてもいいが、病院などでは強い吸引力の機種が必要だ。病院の配管設備の吸引力は、電動式吸引器の最大クラスの吸引力がある。

 しかし、こうした分泌物を吸引する性能だけでなく、吸引器には取り扱いが簡単・確実で、洗浄や部品交換などの負担が少ないことも求められる。臨床現場や家庭ユーザーの立場に立って配慮されている必要があるのだ。

 その観点から「ミニックS―Ⅱ」「W―Ⅱ」「DS―1000」が新製品として注目されるポイントが、まずディスポーザブル仕様である。分泌物は使い捨てディスポバッグにためて廃棄するので、取り扱いが容易だ。

 ディスポバッグに限らず一般にディスポ仕様の製品は、クリーンルーム内で衛生面に配慮された環境で生産されて出荷される。包装なども、必要最小限の接触で済むよう個包装されて、使用直前まで汚染されないような技術が採用されている。しかも使用後はそのまま廃棄するため、洗浄、消毒、滅菌、保管をする必要がない。

 吸引器の場合、ディスポ仕様でなければ分泌物をためるキャニスター部分の分解洗浄が再使用のために必要だった。それが不要で分泌物に接触しないのは、昨今注意が必要とされる感染症対策にもなる。

 さらに、主に病院で使われる壁掛吸引器「DS―1000」は、ディスポバッグ取り付け&取り外しの扉が側面に広く開く。従来ディスポ仕様製品は他社からも登場していたが、ディスポバッグを上部のフタを開けて取り付け&取り外しすることが必要だった。病院の壁面に取り付けられた吸引器の場合、側面扉にすることで取り扱う看護師の負担を大幅に減らすことになる。側面扉は開閉ボタンでワンタッチ操作できる。

 すでに使っている同社製の壁掛吸引器をディスポーザブル仕様に変えることも可能だ。その場合は下部のキャニスターだけをディスポ仕様のキャニスターに交換すればディスポ壁掛吸引器として使用することができる。

 次回は「人に優しいデザイン・機能」を見ていこう。