【なんてったってリハビリ! もしもに備える!基礎知識と最新事情】コロナ禍により、病院ではなく自宅でのリハビリを余儀なくされている人も多いかもしれません。今週、医療ライターの熊本美加氏が注目したのは「訪問リハビリテーション」の“リアル”です。

 在宅でリハビリを続ける方に参考になるコツを、度々お伝えしてきました。今回は、自宅で安心・安全に暮らしていく手助けとなる訪問リハビリについてご紹介しましょう。

 私は高次脳機能障害で記憶が悪くなりましたが、入院中にノートやスマホの活用で記憶を補完することをリハビリで訓練したので、スムーズに自宅での生活に戻ることができました。しかし、障害をもって生活をしていくことへの不安が強い方も多いはず。自宅に戻ったとき、実際に生活をしてみるとできないことが実際はたくさん生じる可能性があります。

 退院された後は、介護保険サービスが利用できます。65歳以上、もしくは40歳以上で特定疾患を患っている方、また介護保険該当ではない疾患や若年の方は医療保険で訪問リハビリを受けられます。私がお世話になった東京都リハビリテーション病院では、この病院を退院した患者さんだけでなく地域からの依頼でも訪問リハビリを行っています。

 訪問リハビリをどのような時に利用したらいいかを医療福祉連携室・地域リハビリテーション科の齋藤正洋さん(作業療法士)にうかがいました。

「病院でのリハビリは医療的な機能回復がメインです。退院が近づくにつれて、徐々に生活機能全般の訓練に変化していきます。その段階で『こういうふうにやっていけば自宅で暮らしていける』と患者さん自身が理解できれば大丈夫です。しかし、患者さんもご家族も生活機能にまで目が向かないまま自宅に戻るとがくぜんとなってしまいます。そうなることが予測される場合やそうなってしまった時には訪問リハビリを提案します」

 訪問リハビリは、何を目的に行うのかを聞くと、齋藤さんは「その人がその人らしく生きていけるように、もう一度役割を獲得して生きていけるように、お手伝いするのが訪問リハビリ。ご本人の気持ちを一番に尊重して、その上でご家族や支援者側の態勢や生活環境を整えていくのが我々のミッションになります」。

 病気を患って、あるいは障害をもって在宅で生活するために、介護保険では医師、ケアマネジャー、作業療法士、理学療法士、看護師などがチームを組み、本人や家族を中心に、その方に合った医療や支援、介護計画を立てていくそうです。これから老後の療養が心配な方も多いと思いますが、とても心強いことがわかりました。

 介護保険での訪問リハビリは平均週1回、1時間程度、実施することがほとんどです。少ない訪問頻度で効果を上げるためには、多職種によるチームワークとともに、並行的に機能訓練や動作の工夫、環境の調整をしていかなければなりません。

「訪問リハビリでのちょっとした提案で、寝てばかりだった方が外出できるようになったり、怒ってばかりだった方が落ち着いて笑顔が増えたり、別人のようにイキイキとしていく姿を見られるやりがいのある仕事です」

 齋藤さんの笑顔を見ると、訪問リハビリの現場はとても前向きで明るいものだと感じました。それではまた次回。

 ☆くまもと・みか 医療ライター。昨年、電車内にて心肺停止で倒れ救急搬送。幸運にも蘇生したが、低酸素脳症による高次脳機能障害でリハビリを経験。社会復帰後、あまり知られていない中途障害者のことやリハビリの重要性を発信中。