「不眠症」が生活習慣病の引き金に

2012年08月10日 12時00分

 日本、米国、フランスの3か国の成人を対象にした睡眠に関する比較調査によると、日本人の睡眠時間は平均6・5時間と最も短く、睡眠の質も満足度も低いことが分かった。専門医らは「日本人は睡眠の重要性をもっと認識する必要がある」と指摘している。

「不眠症は日中の集中力や気力が鈍り、眠気などから事故を起こしたり、生活習慣病やうつとも関連する。もっと睡眠の知識を一般の人が持つべきですね」

 スリープ&ストレスクリニックの林田健一院長はこう指摘する。

 昨年8月にインターネットで日本、米国、フランスの睡眠実態調査(30歳以上の成人7000人が対象)を実施。飲酒やワーキングスタイル、睡眠時間の質や量、不眠の対処方法などを聞いた結果、日本は就寝時の飲酒頻度が37・4%と最も高く、「寝酒」でごまかす傾向にあることが明らかになった。日本人の仕事は「長時間パソコン作業などの単独作業が多い」傾向が見られ、米国、フランスと比較してもストレスがたまりやすいと見られている。

 1970年代以降、日本人の睡眠時間は減り続けている。今回の調査では日本の平日睡眠時間は6・5時間。米国、フランスよりも約30分短かった。2010年のNHK国民生活時間調査での7・14時間(平日睡眠時間)と比較しても短い。

 さらに「睡眠の質」について満足度でも、米国人、フランス人の6割が満足と感じているとしているのに対し、日本人は4割。3人に2人は不満を抱いている。

「米国、フランスでは睡眠時間が長くなれば睡眠の質の満足度も高くなりますが、日本では8~9時間寝ても満足と感じているのは5割。睡眠は、浅い睡眠の『レム睡眠』と深い眠りの『ノンレム睡眠』が約90分サイクルで規則正しく交互に現れ、快適な目覚めを迎えます。でも日本ではさまざまなストレスが正常なサイクルの睡眠の障害となっているのかもしれませんね」(林田院長)

 さらに睡眠の質・満足度と関連した「集中力・気力・充実感の低下や眠気」の調査でも、日本人の日中パフォーマンスが低下しており、「眠気を感じる」については米国3割に対し、日本では7割。睡眠の質が悪い人ほど「眠気を感じる」傾向が顕著だった。

 睡眠時間が長くても短くても睡眠の質が悪ければ、2型糖尿病、高血圧、肥満の生活習慣病やうつ、さらには死亡率が高くなることが、科学的に証明されている。深い眠りがないと、夜間の血圧上昇、糖代謝、成長ホルモン分泌などに影響してくる。平均で6~8時間は維持したいところだが、日本では不眠症と自覚している人でも米国やフランスに比べ、これを軽視する傾向にある。また、米国、フランスが「かかりつけ医」に相談することが多いのに、日本では不眠に困っている人の半数が「相談しない」としている。

 林田院長は「『寝酒』で不眠に対処しても入眠効果があるのは飲み始めで、結局浅い睡眠になり『中途覚醒』も多くなり、悪循環を助長します。実際に医療機関で治療を受けた人は不眠の改善を実感できる。まずは『かかりつけ医』に相談することが大事です」と話している。

【不眠と生活習慣病の関連】
 睡眠が不十分だと疲労やストレスを感じるだけではなく、生活習慣病の引き金にもなる。睡眠不足になると、脳にある摂食中枢が働き、空腹信号のグレリンが増える。さらに満足中枢のレプチンの分泌も減る。その結果、高カロリー食品への食欲が増進したり、インスリンの働きが低下することが分かっており、肥満や糖尿病を発症しやすくなる。

 また、高齢者では不眠症に悩む人が多く、不眠症患者では高血圧を発症するリスクが約2倍にも上昇するというデータもある。不眠が生活習慣病の悪化と密接に関連しているのは明らかだ。