【なんてったってリハビリ! もしもに備える!基礎知識と最新事情】リハビリにもいろいろある。医療ライターの熊本美加氏が、脳梗塞を患った人を取材した。脳を再教育するのだという。

 私がリハビリでお世話になった「東京都リハビリテーション病院」。偶然にも同じ病院に1年後に入院したのが、度々ご登場いただいている惣島厚さん。富士山の見える病院つながりで知人を介してリハビリ仲間として取材しています!

 彼の場合は、脳梗塞で右半身にまひが残ったリハビリで、心肺停止で「高次脳機能障害」だった私とは内容は違っていました。「血栓を溶かす治療の後、一刻も早くとの判断で、急性期病院でいろいろな管につながれたままでリハビリが始まったのです」という惣島さんは2週間後にリハビリ病院へ転院。診察室で主治医から脳梗塞のリハビリは最大6か月といった説明を受けました。

 その際、「どこまで回復したいですか?」と聞かれ、「右手でマウスをクリックできるように、できればカメラを持てるようになりたい」と答えたら、「そう、ですか…」と弱い返答でしたが、結果はどうであれリハビリをやりきろうと決意したといいます。リハビリで文句ばっかり言っていた私とは雲泥の差!

 脳梗塞でのリハビリのポイントは、血管が詰まったことで脳細胞が死んでゼロ歳児に戻ってしまった部分の再教育。筋トレとは違います。「右まひなので、使える左ばかりを頑張ると、右を動かす左脳が動くのを諦めてしまうから、絶対に気をつけて」とリハビリスタッフから強く言われていた惣島さん。最初は言われたことだけをやり、左脳がある程度機能して、右側が反応できるようになってきた段階で、ようやくリハビリの量を自分で増やしたのです。どんなに焦る気持ちがあっても、指導をしっかり守らなければリハビリはうまくいきません。

 惣島さんのリハビリメニューは、理学療法では痛みのある肩のケアと歩行練習。作業療法では、まひのある右手の指の動きを電気でアシストする医療器具を使用した訓練や、お手玉を握って離すのをひたすらに繰り返す。プラス、私は未経験だった言語療法もありました。「顔も右側がまひしていて、どうしても口が曲がっちゃうので、左は力入れずに右を動かす練習ですね」(惣島さん)

 具体的には、毎回言語療法士が顔のマッサージで左の力みを取ってから、口を開けて「ウーイー、ウーイー」と発音。舌を上下に動かす運動は、メトロノームのリズムに合わせて。さらに、舌の動きが悪くなっているので「あかいえ、あおいえ、あいうえお」などの練習。特に、ラ行、サ行など、舌を手前に出し気味の発音が弱くなりがちなので練習に励んだそうですが、これは普通の人でもなかなか難しい…。リハビリとは日々の地道な積み重ねなのです!

 ☆くまもと・みか 医療ライター。昨年、電車内にて心肺停止で倒れ救急搬送。幸運にも蘇生したが、低酸素脳症による高次脳機能障害でリハビリを経験。社会復帰後、あまり知られていない中途障害者のことやリハビリの重要性を発信中。