【注目! 令和の健康新技術】病気を予防したり、生活習慣をチェックするために生み出された毛細血管の血流を観察する装置・血管美人。その技術的特色と開発経緯を紹介しよう。
 
 血管美人はマイクロスコープで指先を見る。左手の薬指の爪の少し下のところ、甘皮の下あたりに少量の専用オイルを塗ってスコープで観察するのである。それだけで、採血することなしに体内を流れる血液をリアルタイムにモニター上で観察することができるのだ。

 映像で見る毛細血管がねじれていないか、太さはどうか、細胞外液は濁っていないかなどを観察し、健康状態をチェックする。継続的に観察すれば、健康なときの正常な毛細血管の状態と比較して、血流が遅くなっていたり、ねじれていたりするといった不調状態が分かることになる。

 血管美人は、「あっと」(大阪市中央区)というヘルスケア・ベンチャーの武野團社長の父・照男氏によって開発された。照男氏は街の発明家で電器店を経営していたが、大腸がんを患ったことをきっかけにヘルスケア機器の開発を始めた。

 彼は、がんの治療効果を自分で把握しようとして「毛細血管像と臨床」(小川三郎著)という医学書に出合う。その際、毛細血管の血流がスムーズかどうかは体調の指標となると考えたが、血流を観察する機器などはそれまで登場していなかった。そこで発明家で電子工学知識もあった照男氏は、毛細血管の形状、長さ、太さなどの状態を観察でき、血流がスムーズかどうかをとらえる機器を2003年、開発したのだ。

 血管美人は発売開始後、テレビの健康番組などに取り上げられプチブームとなったが、09年に照男氏は他界する。後を継いだ子息の團氏が、「あっと」を創業して製造・販売を受け継いでいる。

 現在の血管美人は、当初に開発されたプロトタイプより小型化、簡易化が進み、モニターと本体を合わせても1820グラムである。場所を選ばずに健康チェックできるようになっている。

 いまや、血管や血流の状態は医療や健康管理のさまざまな場面でチェックされるようにもなってきている。血管美人以外にも、加速度脈波計、超音波エコー、CT、MRI、眼底検査機、内視鏡、血液検査などによって血管の状態の検査が可能だが、このうちCT、MRI、眼底検査機、内視鏡は高額で機材が大きく、運ぶことはできない。また、放射線被ばくや採血などは被験者に対し有形無形のストレスを与える。

 そうした機器と比較すると、血管美人はリアルタイムに鮮明な画像によって血流を観察でき、採血が不要で簡単に毛細血管の状態が見られ、小型なので可搬性に優れている。

 こうした特長は今後どのような可能性を生んでいくのか。次回その展望を見ていこう。