【ココロとカラダのニンゲン行動学】「でき婚で女の子ができやすい」という言い伝えがある。それは大いにあり得る話だと思う。

 でき婚とは、できちゃったから急きょ入籍すること。入籍したからよかったものの、子ができる状況では、女はシングルマザーになる可能性があった。

 つまり相手の男からの支援が得られないかもしれない。そういう状況下で男の子、女の子、どちらを産むべきかといえば、断然女の子なのである。

 男の子の場合、そもそも大きく生まれてくるし、その後、大きく育たないと、本人の繁殖において不利になる。背の高い男には子が多いという研究が実際にあるのだ。

 このように男の子には大いなる投資が必要になるわけだが、相手からの支援がないとそれは難しい。

 けれども女の子にはそういう要素はない。そもそも男の子よりも小さく生まれるし、その後の成長が将来の繁殖に関わるということもない。

 よってシングルマザーになるかもしれない状況では、女の子を産むほうが有利となるのだ。

 これが「でき婚で女の子が生まれやすい」という言い伝えの裏にある事情である。

 もう一つ、でき婚で女の子が生まれやすい事情がある。女は若いときには女の子を産みやすく、繁殖が終わりに近づくと男の子を産みやすいからだ。

 米国・ミシガン大学のB・S・ロウ氏(女性です)が、19世紀のスウェーデンの記録を調べたところ、以下のことが分かった(まだ少子化が起きていない状況での生まれ方を調べている)。

 女の年齢と、生まれた子が女を100とした場合の男の子の出生の割合は、25歳未満=89、25~34歳=96、35歳以上=120。

 若いころは女の子をよく産み、繁殖はそろそろ最後という35歳以上ともなると、がぜん男の子を産む。これもまた投資の問題だ。

 若いころは、その後何人子を産むか分からないので、とりあえず省エネタイプである女の子をよく産んでおく。そしてこれが最後という状況になると、全エネルギーを注いでも構わない男の子をよく産むという次第だ。

 でき婚は、たいていは若いときの妊娠。そのような意味からも女の子が生まれやすいはずなのだ。

 ☆竹内久美子(たけうち・くみこ)京都大学理学部卒業後、同大学院で日高敏隆氏のもと、動物行動学を学びエッセイストに。「そんなバカな! 遺伝子と神について」(文春文庫、及び電子書籍)で講談社出版文化賞科学出版賞受賞。最新刊「動物が教えてくれるLOVE戦略」(ビジネス社)が発売中。