【緩和ケア医・大津秀一 長生きのレシピ】今回からは私の専門分野の一つでもある「がん」について取り上げていきます。

 誰もが、がんになる時代。生涯のうち、がんになるリスクは男性63%、女性47%、まさに2人に1人はがんにかかる計算となります。

 一方で、がんで死ににくくなっているのも事実です。治療の進歩などもあり、死亡のリスクは減っています。がんはもはや「なる、ならない」から「いつなるか」というステージに移っています。そのため「働きながらがん治療を行う」など、今後は生活の一部としてがんと共存していく社会がより一般化していくと思われます。

 とはいえ、やはりがんにはかかりたくないと思われる方もいるでしょう。そこで今回は国立がん予防・検診研究センターがまとめている「がんを防ぐための新12か条」をご紹介します。

 1 たばこは吸わない
 2 他人のたばこの煙をできるだけ避ける
 3 お酒はほどほどに
 4 バランスの取れた食生活を
 5 塩辛い食品は控えめに
 6 野菜や果物は不足しないように
 7 適度に運動
 8 適切な体重維持
 9 ウイルスや細菌の感染予防と治療
 10 定期的ながん検診を
 11 体の異常に気が付いたらすぐに受診を
 12 正しいがん情報でがんを知る

 いかがでしょうか。一般的な事柄が多いようにも感じるかもしれませんね。1と2の禁煙、受動喫煙防止に関しては最近では厳しくいわれているため、だいぶ浸透してきたように感じます。

 また12に関しては、正しい情報収集の重要性を示しています。病気の情報に関しては「〇〇をすれば治る」といったワンフレーズで言い切り型のものに関しては注意したほうがいいと先述しましたが、改めて「正しいがん情報」に接することが長生きにつながります。

 また、項目にはありませんが、ビタミンDもがん予防の世界では注目されています。2018年、国立がん研究センターは日本の3万4000人を調べた検査において、血中ビタミンD濃度がある程度高いグループでは、がんになるリスクが低くなることを示したと発表しました。

 ビタミンDは紫外線を浴びることで体内で合成するほか、食品からも取れます。イワシ、サケ、ウナギ、サンマ、しらす干しやキクラゲなども豊富です。日照時間が少ない今の時期は、意識して食品から取るようにしましょう。次回以降もがんとの向き合い方についてお伝えしていきます。

 ☆おおつ・しゅういち 茨城県出身。岐阜大学医学部卒業。内科専門研修後、ホスピス、在宅、ホームなど様々な医療機関で終末期医療を実践。東邦大学病院緩和ケアセンター長を経て、オンライン診療も行う早期緩和ケア大津秀一クリニックを設立。多くの終末期患者と向き合ったことで、予防医学にも力を入れる。著書に「1分でも長生きする健康術」(光文社)、「誰よりも早く準備する健康長生き法」(サンマーク出版)など多数。