【イケメンドクター・吉田眞の医学情報のウソ!ホント?】

(先日、前立腺がんで亡くなった恋愛小説の大御所・渡辺淳一さん(享年80)はかつて整形外科医だった)

 医師から小説家に転身された方は古くは森鴎外や北杜夫など、かなり多いですし、そうなる理由も思い当たります。個人的には医師が小説家になれる最大の要因は「経験」だと考えます。職業柄、医師は様々な場所に出入りできますし、人の不幸や幸福に日常的に遭遇します。生と死、グロテスクな場面、世の様々な矛盾などを、診療を通して経験するのです。

 また、医師免許さえあればへき地でも都市部でも好待遇で雇ってくれるでしょう。要するに、医者であれば自由に「旅」ができ、そして行った先々で起きた「ドラマ」に入り込むことができるのです。医者であるというだけで、小説になるネタを大量に入手できる――という説は本当です。

 もちろん、医者が皆、小説を書いているわけではなく、多くのドクターは日々の生活に押し流されているか、あるいは研究論文を書くなどして過ごしています。読書好きの医師は多いので、こっそり小説を書いている先生もいるかもしれませんが、ボクはこれを書き上げるだけで精一杯です。

☆よしだ・しん=総合診療科医を経て、現在は精神科医。非常勤医師として、刑務所、少年院、ホームレス支援施設、高齢者の在宅診察などに従事し、精神医療のディープな部分につかる。2009年にはラジオパーソナリティーを務めた。