【なんてったってリハビリ! もしもに備える!基礎知識と最新事情】様々な理由でリハビリを行っている人は多いはず。再びの緊急事態宣言により、病院に通えず、自宅で一人で頑張っている人もいるだろう。昨春、同様の体験をした医療ライター・熊本美加氏が、「ぼっちリハ」のリアルをつづります。

 新型コロナ感染拡大が止まらず、再度、緊急事態宣言が発令されました。私の入院していたリハビリ病院も、相変わらず面会・外出・外泊禁止。外来リハビリの再開も延期になってしまいました。それでもスタッフの皆さんは徹底的に予防対策をして、365日リハビリを続けています。

 急性期病院で「高次脳機能障害」と診断された私は、体力と脳機能回復のためリハビリ病院の入院を経て、退院後は自宅リハを続けながら社会復帰をしていきました。最初は嫌悪感でいっぱいだった入院生活も、至れり尽くせりの医療&ケアの整った環境は超安全地帯でした。もちろん、リハビリでは思い通りにいかずつらいことはたくさんあったのですが、それを乗り越えられたのは、目標を共有し、励まし、褒めてくれた、リハビリスタッフがいたから! そう気が付いたのは、一人暮らしの自宅に戻って「ぼっちリハ」生活が始まってからでした…。

 薬を飲み忘れる。仕事のアポの日時を勘違いする。切手を貼り忘れた郵便物が戻って来る。そんな失敗がしばしば。スグに仕事に戻れると過信していましたが、「私って、やっぱり脳がやられているんだ…」と。暗闇の中を手探りで歩いているような恐怖感。でも、手助けしてくれる人は誰もいない。

 そんな時、リハビリ病院で学んだ基本「機能は戻らなくても、それを補う方法を考えればいい」という言葉を思い出しました。すぐに服薬管理ケースを購入。いつも持ち歩くノートに大事なことはしっかり極太赤マジックでメモ。パソコン周りにもやることを書いた付箋をペタペタと貼りつける。約束がある時には目覚まし時計&スマホのアラームをかける。アラームの前のアラームもかける(苦笑)。自分を信用できない一人暮らしで、二重三重に備えるようになりました。どうしてもつらい時はリハビリ病院の臨床心理士さんに相談の電話をしました。

「少しずつ慣れていきましょう。頑張りすぎると、ポキッと折れちゃいますよ。時間をかけて生活リズムを整えて、体力をつけるのがポイント」と、アドバイスをくれました。

 そんな中、前回の緊急事態宣言でぼっち度はさらにアップ。そんな時、メンタルの支えになったのは、Zoomでの猫互助会です。入院中にも私の飼い猫の面倒を見てくれたメンバーとのおしゃべり。私の失敗談を話すと「いーよ、生きてるだけで丸儲け!」「無理は禁物だよ」「何か手伝うこと、あれば言ってね」という言葉は本当にありがたかったです。私自身が感じた「ぼっちリハ」で大切なのは、誰かと気持ちを共有すること。SNSでも手紙でも手段はなんでもOK。ぼっちリハの家族や友人がいたら、ぜひ声かけをしてください。自分の存在を認めてくれる人がいると思うと頑張れるものです。

 ☆くまもと・みか 医療ライター。一昨年、電車内にて心肺停止で倒れ救急搬送。幸運にも蘇生したが、低酸素脳症による高次脳機能障害でリハビリを経験。社会復帰後、あまり知られていない中途障害者のことやリハビリの重要性を発信中。