【注目! 令和の健康新技術】クラゲのマイナスイメージをプラスに転じて、有用成分を抽出し活用する技術の恩恵は薬品や食品だけのものではない。今や世界中から注目される大きなメリットを生み出しているのだ。

 クラゲからコラーゲンを抽出する技術を開発した㈱海月研究所(横浜市鶴見区)は理化学研究所発のバイオベンチャーだ。機能材料やサーキュラービジネスにも力を注いでいる出光興産のグループ企業である。

 時に巨大なエチゼンクラゲによる漁業被害が報道されるのをご存じの方も多いだろう。

 ミズクラゲも、漁業被害だけでなく発電所の取水口に押し寄せ厄介者扱いされる。大量のため、駆除コストもばかにならない。

 このクラゲを資源にできれば、と考えたのが海月研究所の木平孝治社長である。クラゲの用途は食用にする程度しかないが、世界でクラゲを食べるのは日本と中国くらいで非常に少ない。

 バイオ分野で臨床検査の専門家だった木平社長は「クラゲからはコラーゲンやムチンが抽出できるので薬品や化粧品、食品原料としてチャンスがある」と考えた。こうして、原料クラゲを発生地域で採取し、そのクラゲを一つひとつ丁寧に洗浄して殺菌。さらに水分を減らして体積を減らす一次処理をした上で、クラゲに含まれる有用物を特許取得した独自製法で抽出。そして、各種の用途に合わせて加工、販売する技術を開発したのだ。

 クラゲ由来コラーゲンの中でも、食品原料用はビゼンクラゲから抽出している。ビゼンクラゲは瀬戸内海や九州地方に生息する大型の食用クラゲで、中国では食材として最高級にランクされるクラゲである。

 もともとクラゲは漢方の薬膳でも、解熱、せき、二日酔いを改善するとされ、血流を促進する食材と考えられていた。食品用のクラゲ由来コラーゲンも、大腸を潤す作用による便通・消化不良の改善や、関節痛の改善に効果的であるといわれ、サプリメントなどの原料として使われている。また最近では低カロリーのダイエット食としても注目されている。

 現状では、同社はクラゲ由来のコラーゲンとムチンを抽出している世界唯一のメーカーである。クラゲは膨大な量が存在する未利用資源であり、原料枯渇の心配がない。いまやクラゲを持続的に活用していくことは、海の生態系バランス保持にもつながるとしてグローバルで注目されるようになっている。

 次回はクラゲ由来物質が世界に大きな需要を生む可能性に注目してみよう。