【緩和ケア医・大津秀一 長生きのレシピ】コロナ禍で揺れた2020年も残りわずかとなりました。年末年始は時に仕事の追い込みや、飲み会の予定などで忙しさもあり体調を崩しがちです。そんな今だからこそ気を付けたいテーマ、今回は不眠を取り上げます。

「なかなか眠れない」「睡眠時間が以前より減った」という悩みを持っている方も多いですよね。睡眠不足の状態が長く続くと、はっきり言って体には危険な状態となります。その理由を説明するとともにどのように対応していけば良いかを考えていきましょう。

 睡眠不足は病気のもとになりますが、そもそも日本人は世界の中でも睡眠時間が少ないことで知られています。スペインなどでは昼の時間帯に昼寝を含めて休憩を取るシエスタなどが通例となっていますが、日本でも最近はようやく「ランチ後に少しの昼寝の時間を取りましょう」といった習慣が勧められてきています。

 睡眠不足の何が怖いかといえば、具体的には糖尿病や心血管疾患との関連、また食欲も増大し、ホルモンを介して肥満に影響を与えることも分かっています。同時に日中の眠気や意欲低下、記憶力減退など、倦怠感、イライラなども引き起こして、人間にとって重要な前頭葉の機能にも影響を与えます。

 ほかにも今の時期には一番避けたい免疫力の低下につながる点や、転倒のリスクを増やすことなど、睡眠障害はそれ自体が生活習慣病の一つとさえ言われるほどです。

 では、具体的にどのように対応していけばいいのか。基本的なこととして不規則な食事や運動不足、ニコチン・アルコールの過剰摂取によって悪化するため、特に飲み会などが増えるこの時期は、いつも以上に気を付けていただきたいです。

 また、中高年以上の世代にありがちなのが、「目が早く覚めてしまう」こと。早くに目覚めてしまうことで睡眠覚醒のリズムが乱れ、これまた良くありません。そのため、早起き過ぎる方は、あまり早い時間帯に日光を浴びないようにしっかり部屋を暗くする措置を取ることも大事です。

 運動も忘れずに。日中にウオーキングなど軽めの運動を行うことで、夜はしっかり眠れるようになります。筋肉量が減って歩くのがおっくうになると、余計眠れなくなり、悪循環に陥りがち。冬場の寒さに負けそうになりますが、人のいない時間帯を選んで歩くことは続けましょう。

 忙しい年末年始だからこそ、しっかり睡眠を取って、病気にならない体づくりを心がけたいものですね。

 ☆おおつ・しゅういち 茨城県出身。岐阜大学医学部卒業。内科専門研修後、ホスピス、在宅、ホームなど様々な医療機関で終末期医療を実践。東邦大学病院緩和ケアセンター長を経て、オンライン診療も行う早期緩和ケア大津秀一クリニックを設立。多くの終末期患者と向き合ったことで、予防医学にも力を入れる。著書に「1分でも長生きする健康術」(光文社)、「誰よりも早く準備する健康長生き法」(サンマーク出版)など多数。