【なつかしの健康法列伝:ニワトリの生き血】

 精のつく食材として動物の生き血がある。日本ではすっぽんのそれが代表格だ。かたや、生き血を直接「注射」するという健康法もその昔、ブームになった。

 とはいえ、これは中国のお話。きっかけについては諸説あるが、1960年ごろ上海の医師が発見したという説が有力だ。ニワトリの生き血を注射することで、「片頭痛」「胃潰瘍」「ぜんそく」などさまざまな病気に効果があるとされた。

 この医師らのキャンペーンによって国民の多くに知れ渡ったが、もちろん医学的根拠は皆無。むしろリスクのほうが高いのは言うまでもなく、65年には当局もこの健康法を禁止した。

 しかし、翌66年に文化大革命が勃発すると状況は一変。外国を敵視し西洋医療を嫌う風潮に後押しされ、同年、禁止令は撤回。67年には“革命的な医療”として全土的ブームとなった。もちろんこのブームも1年足らずで失速した。ただし、現地では断続的に“プチブレーク”する療法でもあり、90年代にも「エイズに効く」とブームになったことがある。

 ちなみにこの療法を意味する中国語「打鶏血」は、現在“理性が利かない”“急に興奮する”という意味としてネット上のスラングとして使われているそうだ。