【イケメンドクター・吉田眞の医学情報のウソ!ホント?】

“霊長類最強の女”吉田沙保里(31)の父・栄勝さん(享年61)の命を奪った「くも膜下出血」とは、それほど危険な疾患なのか?

 はい、その危険性は十分にあります。

 くも膜下出血とは、脳を覆う膜のひとつ、外側の硬膜と内側(脳側)の軟膜に挟まれている膜の「くも膜」での出血です。くも膜の表面には脳に栄養を補給する血管が網目状に広がっており、これが「くも膜」という名前の由来です。

 くも膜下出血が起きると、硬膜が文字通り本当に硬いため、血液が脳側の「くも膜下腔(くもまくかくう=くも膜の下部にあるすき間)」に流れ込み、脳の本体を圧迫します。したがって出血量が多ければ多いほど症状は重くなり、致死率も高まるのです。

 外傷性のくも膜下出血では、出血場所や出血量が違うため致死率もまちまちですが、脳の動脈瘤が破裂するような場合、大概は大量の出血となります。

 そのため、血腫による脳の圧迫で呼吸や循環を調節する「脳幹部」の機能が停止したり、瞬間的な脳虚血が心停止の自律神経反射を導いたりと、即死のリスクは非常に高くなってしまうのです。

 仮に即死は免れたとしても、再出血や深刻な脳障害のため、4週以内の死亡率は50%に達するというデータもあります。その後も植物状態などが続くことが多く、発症後10年以内に7割前後が亡くなる、といわれています。

☆よしだ・しんー内科・外科をともに扱う総合診療科医を経て、現在は精神科医。1972年1月10日生まれ。東京医科大学を卒業後、都立松沢病院で研修。その後は非常勤医師として、刑務所、少年院、ホームレス支援施設、高齢者の在宅診察などに従事し、精神医療のディープな部分につかる。2009年にはラジオパーソナリティーを務めた。