【石原結實 病気を吹き飛ばす食図鑑】コーカサスからパレスチナ原産。日本にはインド、中国、朝鮮半島を経て、1200年以上も前に伝播。春の七草の「スズシロ(清白)」は大根のこと。

 江戸時代の養生学者、貝原益軒は「(大根は)野菜の中で最上のもの、いつでも食べるとよい…」と言っている。

 大根にはデンプン分解酵素(ジアスターゼ)、タンパク分解酵素(プロテアーゼ)が含まれる上、辛味成分(イソ硫化シアンアリル)は、胃液の分泌を高めるので、健胃、消化力促進作用が強力で、胸焼け、胃酸過多、胃もたれ、二日酔…に奏効する。

 含有成分のオキシダーゼは、焦げた魚にできる発ガン物質(ベンツピレン)を解毒する。焼き魚に大根おろしが添えられているのは、昔の人の経験から来ている知恵であろう。

 ミネラルとしては、「鉄」と「マグネシウム」が多く含まれるため、消炎作用、収斂(しゅうれん)作用を発揮し、かぜ、気管支炎、出血…などに奏効する。豊富に含まれるビタミンCは、血管を強化し、免疫力を上げてくれる。

「本朝食鑑」に「ダイコンは能く殻を消し(消化し)、痰を除き、吐血、鼻血を止め、メン類の毒を制し、魚肉の毒、酒毒、豆腐の毒を解する」とあるのは、昔の人が大根の効能を悉知していた証左である。

 その他、セルロース、ペクチン、リグニンなどの食物繊維は、整腸作用、便秘の改善、大腸ガンの予防に役立つ。
 咳、痰、声枯れには「約50ccのおろし汁に同量の湯を注ぎ、ハチミツを加えて飲む」とよい。

 ◆石原結實(いしはら・ゆうみ)1948年、長崎市生まれ。医学博士。イシハラクリニック院長として漢方薬と自然療法によるユニークな治療法を実践するかたわら、静岡・伊豆でニンジンジュース断食施設の運営を行う。著書は300冊超でベストセラー多数。最新作は「『空腹』の時間が病気を治す」(青萠堂)。