【イケメンドクター・吉田眞の医学情報のウソ!ホント?】

 いいえ、基本的には致命的な状態にはなりません。

「肺胞」とは、肺の奥の奥、呼吸で取り込んだ酸素を血液に溶かす、肺の最も薄い膜です。呼吸効率を上げるために膜が袋状になり、ブドウの房のような集団を作っています。当然、肺胞には血液が多く通りますから、房の内外で出血する可能性は十分にあるのです。

 しかし、肺胞全体の面積は一般の人が想像するよりはるかに広く、テニスコート大の広さがあります。ですから、仮にその一部に出血があったとしても、致命的な呼吸不全は起きないのです。

 逆に、たとえ少しずつでもテニスコート全体から出血してしまうと、致命的な状態に陥ってしまいます。

 例えば、血液の凝固を抑える薬や細胞障害性の高い抗がん剤を服用している場合、肺の粘膜全体が一気に出血する可能性があります。また「膠原病(こうげんびょう)」という特殊な病気では、肺の組織が徐々に弱くなり、ある時期に肺全体から出血、ということもあり得ます。

 ちなみに末期の結核では「血を吐いて窒息」しますが、これは肺胞出血ではなく、結核病巣が肺の動脈を破壊した結果です。

☆よしだ・しん=内科・外科をともに扱う総合診療科医を経て、現在は精神科医。1972年1月10日生まれ。東京医科大学を卒業後、都立松沢病院で研修。その後は非常勤医師として、刑務所、少年院、ホームレス支援施設、高齢者の在宅診察などに従事し、精神医療のディープな部分につかる。2009年にはラジオパーソナリティーを務めた。