【なんてったってリハビリ! もしもに備える!基礎知識と最新事情】急激に新規感染者数が増えているが、コロナ禍はリハビリを行う人々にどんな影響を与えているのか。医療ライター・熊本美加氏がリポートします。

 私が心肺停止で倒れたのはちょうど1年前。まだ新型コロナのコの字もありませんでした。リハビリを終えて退院した今年2月も、まだ新型コロナが横浜クルーズ船でとどまっていたころでした。

 あれから、変遷を経つつも、感染は拡大しています。お世話になった急性期・回復期病院は当然、面会禁止です。入院中に家族や友人の励ましがないのは、入院患者はどんなに心細いだろうと想像すると胸が痛みます。

 コロナ禍で私がお世話になったリハビリ病院では外来は閉じているものの、入院患者さんの治療やリハビリは相変わらず365日継続しています。スタッフはもちろん入院患者さんを含め全員に朝晩の検温を実施。うがい&手洗いは必須。全ての部屋の入り口には消毒液が配置され、スタッフは常にアルコール消毒液を持ち歩き、こまめに消毒。ソーシャルディスタンスを保つために、リハビリ室だけでなく各病棟フロアへ患者さんを割り振り、マスクをしてリハビリを行っています。

 ビフォーコロナでは、リハビリには家族や友人が付き添うことができました。見守られることで患者さんが励まされるだけではなく、周囲が障害を理解できるのが大きなメリット。退院後につえや車椅子はどんなものがいいのか、手すりやバリアフリーなど自宅のリフォームはどこまで必要なのかなど、具体的な生活でのサポートをイメージすることができたのですが、それがかなわない現状は残念です。

 しかし、それでもリハビリスタッフのみなさんは相変わらず笑顔いっぱいで、患者さんと向き合っていました。

「こんな時だからこそ、なるべく楽しくリハビリできるようコミュニケーションを取るように努めています。モチベーションを上げるポイントは、目標を共有して、それに向かって頑張ろうねという励ましです。『寝てばっかりいないで動いてくださいよ』と言われるよりは、『おうちに帰りたいなら、これくらいまでは頑張ってみましょう』と目標を示すとスイッチが入りやすいと思います」

 こう話すのは、私を担当してくれた理学療法士の三好このみさん(東京都リハビリテーション病院)。例えば、「今は300メートルしか歩けないけど、仕事に復帰するには1キロ歩けるようになろう」「1時間座っていられるのを目標に体力をつけましょう」と、具体的なゴールを決めて一緒に目指す…。

「『わかっているけど動けない…』という方には、無理強いはしません。そこでリハビリが嫌だと思われたら元も子もないですから。さじ加減も大切です」

 私も入院生活でちょっとした声かけや励ましのおかげで頑張れました! 面会ができない今ですが、オンラインお見舞いや手紙などでリハビリ患者さんに、ぜひエールを送ってほしいです。

 ☆くまもと・みか 医療ライター。昨年、電車内にて心肺停止で倒れ救急搬送。幸運にも蘇生したが、低酸素脳症による高次脳機能障害でリハビリを経験。社会復帰後、あまり知られていない中途障害者のことやリハビリの重要性を発信中。