【なんてったってリハビリ!】社会復帰に大切な「トリガー」

2020年11月23日 10時00分

作業療法室に飾られた絵、書道、手芸、俳句…。皆さん、自分の好きなことをリハビリに取り入れているんです

【なんてったってリハビリ! もしもに備える!基礎知識と最新事情】心肺停止の低酸素脳症によるダメージで「高次脳機能障害」と診断を受けた医療ライター・熊本美加氏。最初は嫌悪感を抱いたリハビリだが、いつの間にか前向きに取り組めるようになったという。今回はリハビリがうまくいくコツに迫る。

「リハビリが必要になった時に、やる側が主体的にやるかやらないかで、効果の違いは歴然です」とは、私を担当してくれた作業療法士(OT)の大場秀樹さん(東京都リハビリテーション病院)。

 OTとは日常生活をスムーズに送るために患者が失った身体の機能と社会適応能力の回復をサポートしてくれる専門職です。確かに、そもそも意欲がないとリハビリなんて無理。正直、私もやる気ZERO~♪なのにそのスイッチが入ったのはどうしてだったんでしょう。

「3つの要素が重要だと考えています。ひとつは、自分の現状(病状や障害)を理解できているか。2つ目は、その状況に上手に対処・対応できているか。3つ目は、それにリハビリをする意味づけができているか。この3つをそれぞれ強化していくのが理想ですが言うはやすしで、難しいですね」

 ただの筋トレとは違うのがリハビリ。個人のキャラクターや大事に思っていること、興味、関心を把握してリハビリを組み立て調整していくので、AIにはできないカスタマイズ! そのため、本人はもちろん、家族、友人にヒアリング。さらに、病室のベッド周りに置いてある本や飾りなどからも情報収集。「あなたにとって大切なことはなんですか?」とストレートに質問したり、たわいのない会話からも常にヒントを探っているそう。スゴ過ぎます!

「作業療法士をマッサージ師と勘違いしている方も多いのですが、受け身ではなく自分から動かないと効果が出にくいです。その方にとって日常の暮らしで意味や価値のあるものにアプローチできれば、やる気スイッチはオンにできます」

 たとえば、寝たきりになってしまったおばあちゃん。「自宅の窓越しから、近所の子供たちと『おばあちゃん、おはよう』とあいさつを交わすことが楽しみだったの」と聞き、まず座っていられる練習をしようと促していく。片手がまひしたお母さんから「娘の弁当を作りたい」と聞けば、冷凍食品やカット野菜を使い工夫して片手で作れるように一緒に取り組んでいく。ソウイウヒトニワタシハナリタイ!!

 何かトリガーさえあれば、自分の現状を理解して、それに対応する訓練や補う方法を身に付けるように取り組める。それによって人との交流が生まれ、よろこばれる、褒められることに価値を見いだせば、ウツウツやイライラした人(私)が急にリハビリに前向きになるのです。

 私が自分自身のリハビリ経験で感じた「ヒューマンスキル」の重要性。一人ひとりに合わせた細かく温かい対応で生まれる信頼感こそが猛烈なパワーです。

 ☆くまもと・みか 医療ライター。昨年、電車内にて心肺停止で倒れ救急搬送。幸運にも蘇生したが、低酸素脳症による高次脳機能障害でリハビリを経験。社会復帰後、あまり知られていない中途障害者のことやリハビリの重要性を発信中。

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