【ニンゲン行動学】オキシトシン投与で人の心をよく読み取れるようになる

2020年11月01日 10時00分

目と眉毛の写真を見て、その人物の心を読み取るテストを行うと…

【ココロとカラダのニンゲン行動学】人の心を読むとき、最もその手掛かりになるのは、「目は心の窓」というように、目とその周辺の様子だ。

 実は人の顔写真のうち、目と眉毛のあたりのみを切り出し、写真の角の4か所にその人物の心の状態(悲しいとか興味津々とか、イライラしているなど)を表す言葉を配置する。そうしてその人物の心を4つのうちから選んで当てる、というテストがある。

 RMETと呼ばれるそのテストは、大人の自閉症を発見するためのものだ。

 自閉症は、対人関係やコミュニケーションなど、人の心が読みづらいために起こる障害だ。よってこのようなテストによって発見する。ただ、どんな人でも自閉症的要素はあり、それらは連続的で、どの程度その要素があるかが問題だ(近年では、自閉スペクトラム症と呼ばれる)。

 自閉症はまた、愛着や絆の形成に関わるホルモン、オキシトシンの不足によって引き起こされると考えられ、実際、その投与により改善が見られるのだ。

 そのようなわけで、健康な人(もちろん自閉症的要素はある程度、持っている)でも、オキシトシンの投与によって人の心を読む能力がアップするのではないか、と考えた人々がいる。

 スイス・チューリヒ大学のG・ドメス氏らは、30人の若い男性に対し、オキシトシンを鼻にスプレーした場合とプラシーボ(偽薬)をスプレーした場合とで、RMETの成績がどう変化するかを調べた。

 この30人は、1週間を置いて両方の条件下でテストされる。テストの問題は、あらかじめ80人の男性によって、簡単な問題と難しい問題に分類されている。36問のテストでどれくらい正答率が違うのか? 平均でオキシトシン・グループは72・4%、プラシーボ・グループは69・4%となり、3%の違いがある。これでも既に有意な差があるが、簡単な問題と難しい問題に分けると、面白いことが分かった。簡単な問題の正答率はどちらも85%で全く差がない。しかし難しい問題ではオキシトシン・グループの60%に対し、プラシーボ・グループは55%という明らかな違いがあった。

 オキシトシンの投与によって人の心をよく読み取れるようになるが、それは“読み取りが難しい問題がよく解けるようになる”ということなのだ。

 ☆竹内久美子(たけうち・くみこ)京都大学理学部卒業後、同大学院で日高敏隆氏のもと、動物行動学を学びエッセイストに。「そんなバカな! 遺伝子と神について」(文春文庫、及び電子書籍)で講談社出版文化賞科学出版賞受賞。最新刊「フレディ・マーキュリーの恋 性と心のパラドックス」(文春新書)が発売中。

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