【イケメンドクター・吉田眞の医学情報のウソ!ホント?】

 インフルエンザウイルスは通常、空気感染してヒトの咽頭(いんとう)に付着し、咽頭の細胞の表面にある突起物「糖鎖(とうさ)」に結合します。そして、その周辺の膜構造を変化させて、細胞内部に侵入します。

 侵入したウイルスは、DNAからたんぱく質を作り出す細胞機能を利用して、自らのクローンを大量に産生します。糖鎖の形状は多くのバリエーションがあり、中にはインフルエンザウイルスが結合しにくいタイプもあるかもしれませんが、基本的には誰もが感染を許しているのです。

 ただし、インフルエンザの症状が引き起こされるかどうかは、体の中の免疫、つまりウイルスを駆除する「抗体」の対応能力に依存しています。過去に同じ型のウイルスに感染したことがあるとか、たまたま偶然に作られた抗体が新規のウイルスの型とマッチしていた場合、抗体は即、インフルエンザウイルスの排除に取り掛かります。

 この場合、症状が出ずに治癒してしまい、表面上は「インフルエンザにかかっていない」ように見えるのです。

☆よしだ・しん=総合診療科医を経て、現在は精神科医。非常勤医師として、刑務所、少年院、ホームレス支援施設、高齢者の在宅診察などに従事し、精神医療のディープな部分につかる。2009年にはラジオパーソナリティーを務めた。