【イケメンドクター・吉田眞の医学情報のウソ!ホント?】

 縊首(いしゅ=医学用語で首つり)の自殺と絞殺とで、最も異なるのは“死ぬ人が苦しがるか否か”という点です。

 絞殺の場合、被害者は必ずその苦しみに対して抵抗を試みます。ロープで絞められたなら、それを外そうとしますし、手で絞められたなら相手の腕を引っかくでしょう。すると、被害者の爪には自分の首の皮膚、あるいは加害者の腕の皮膚が混入することになり、そこで他殺の判定ができるのです。

 場合によってはDNA鑑定で犯人を割り出すことも可能です。また、絞殺の際にヒモ類を使用する場合でも、首つり自殺であれば傷痕は1本ですが、絞殺の場合は“絞めた時の傷”と“自殺に見せかけて、つるした時の傷”の2本の傷痕がつくられます。さらに、ジワジワと首を絞めて窒息死に至らしめる時には、目の結膜に「溢血点(いっけつてん)」という点状の出血をつくります。

 こうした鑑別点をクリアして完全犯罪をたくらむことは難しいのです。

☆よしだ・しん=総合診療科医を経て、現在は精神科医。非常勤医師として、刑務所、少年院、ホームレス支援施設、高齢者の在宅診察などに従事し、精神医療のディープな部分につかる。2009年にはラジオパーソナリティーを務めた。