【なんてったってリハビリ!】高次脳機能障害から私は〝復帰〟しました

2020年10月11日 10時00分

集中治療室に入った私

【なんてったってリハビリ! もしもに備える!基礎知識と最新事情】人生、いつ何が起こるか分からない。どんな人でも、日常生活を取り戻すためのリハビリが身近になることだってある。身をもって経験した女性医療ライターの熊本美加氏が、最新事情をリポートします。

 世の中にはリハビリに取り組んでいる人がたくさんいます。最近ではその方法や技術は格段に進化しており、基礎知識や最新事情にも関心を持つべきだと思うのですが、人ごとだと思っていませんか? かくいう私もそうでした。ある朝突然、心肺停止で電車内で倒れるまでは…。

 復帰までの道のりをつづった先週までの連載を読んでくださった方には改めてになりますが、私は周りに助けてくれる人が居合わせ、適切かつ迅速な救急措置で病院搬送されました。とはいえ、心臓が止まってから救急病院で人工心肺につながれるまで約1時間。その間、脳には酸素が送られていない状態で、医師からは「命が助かるか分からない。たとえ命を取り留めたとしても、脳ダメージで元通りには戻れない可能性が大きい」と家族に伝えられました。

 私の心臓は奇跡的に再起動しましたが、やはり恐れていたことが起きました。告げられたのは「高次脳機能障害」という初めて知る病名。発症の原因は、8割は脳卒中で、残りは交通事故などの脳外傷、その他は私のような心筋梗塞や窒息から起こる低酸素脳症です。

 集中治療室で生死の境をさまよう私の姿に号泣した家族ですが、私が50代バツイチ一人暮らしという境遇なので、「もし要介護になったら、いったい誰が面倒みるの?」と自分たちに降りかかる負担がよぎったそう。90歳になる父は「面倒みれません!」と真っ先に白旗を掲げたらしい。そりゃそうだ(苦笑)。家族が脳卒中や事故に見舞われ、「どうか命だけは助けて」と懇願する時に、心や体に障害が残った場合まで考える余裕はなかなかないはずです。

 実際、覚醒した私は脳ダメージによる問題が次々と発生しました。暴言、妄想、凶暴化。さらに脱走で、拘束ベルトを付けられ、ベッドサイドには動いた時に踏むとアラートがなるマットが置かれました。

 主治医から「今の状況では一人暮らしなんて、とてもできません」と宣告され、「なんで退院できないんだよ、バカ野郎! 家に帰らせろ、この野郎!」とバトル。記憶は曖昧ですが、今振り返ると自分に障害があると理解する「病識」がない状態で、高次脳機能障害の典型的な症状が出まくっていました。

 後で知りましたが、脳に障害を受けた場合は一日も早く本格的にリハビリを開始するのが回復の決め手。しかも、疾患によって保険適用になる入院期間が決まっていて、一度急性期病院を退院してしまうと、その後のリハビリ病院への入院は保険適用外。憤慨する私を説得し、リハビリ病院に転院にさせた医師の判断は、実に的確だったのです。転院先の「東京都リハビリテーション病院」(墨田区)で、手厚いチーム医療によるリハビリで、こうして仕事に復帰することができました。

 心肺停止、脳卒中、事故などで家族や自分が今まで通りの生活を奪われたら…そんなとき助けてくれるのがリハビリです。だからこそしっかり知識を持っておくべきだと痛感した私。来週以降、転んだ後の杖になってくれるリハビリのエトセトラを、医療従事者に取材してお伝えしていきます。どうぞよろしくお願いします。

 ☆くまもと・みか 医療ライター。昨年、電車内にて心肺停止で倒れ救急搬送。幸運にも蘇生したが、低酸素脳症による高次脳機能障害でリハビリを経験。社会復帰後、あまり知られていない中途障害者のことやリハビリの重要性を発信中。

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