シャバに戻ったらどうしてもやりたかったコト――。心肺停止で倒れ、身体と脳機能に障害が残った50代独身(バツイチ)の女性医療ライターがリハビリ専門病院を退院しました。そして…。

 規則正しく時間も食事も管理されていた入院生活で、足りなかったのは猫と酒と体に悪い食べ物。退院後には、胃もたれ必至の揚げ物料理を食べまくり、4キロ減った体重は6キロ戻りました。

 私がシャバに戻って一番にしたかったのは、命の恩人たちへのお礼参りでした。けが人や急病人が発生した時に、その場に居合わせた人のことを「バイスタンダー」と呼びます。響きはバイプレーヤーみたいですが、「bystander」は直訳すると「傍観者」という意味。実際には、病院に運ばれる前にバイスタンダーの皆さんが、傍観することなく迅速に救急対応を行い、救急隊に引き継いでくれたおかげで、心肺停止から私はよみがえることができたのです。

 倒れた駅を訪れると「ほんとに良かった」と喜んでくれました。そして「乗客の安全確保が日常の最優先のミッションで、当然のことをしただけです」と。かっこ良すぎで、ありがた過ぎで涙がこぼれそうになりました。そして、私が車内で卒倒した時に、救急車を手配してくれた女性の乗客の方も探し当てることができました。お礼に伺うと、「目の前に座っていた人が突然に椅子から転がり落ちた姿を目撃したら、誰でも119番通報したと思います」と話してくれました。でも、自分だったら冷静に対処できたか自信はありません。

 救急病棟の先生の元にも伺いました。「五分五分より分が悪い。たとえ生き残っても意識が戻るかわからない。意識が戻ったとしても障害が残る可能性が大きい。ですが、希望を捨ててはいません」と家族を勇気づけてくれたことにも感謝です。「私たちはやるべきことをやっただけ。いろんな運が重なって命が救われたのはあなたの宿命です。これから社会貢献して恩返ししてください」というメッセージをしかと心に刻みました。

 よみがえらなければ、テレビのスイッチを消すみたいに、人生は一瞬でプチッと終わっていました。きっと自分が死んだことにも気が付かないまま、永遠の眠りについていたでしょう。電車に乗るたびにいつも振り返っています。今までは自分一人の力で生きているつもりでしたが、よみがえり体験を通してたくさんの人に助けられて、生かされていると感じるようになりました。今という時間を大切にしなければという気持ちを、日々の暮らしでうっかり忘れないようにしなければ!