本来、医療と特定秘密は関係ないはずですが、もしかすると厄介なことになるかもしれません。

 国の防衛に関する事項を特定秘密とし、限られた人だけが情報を保有するという新しい法律により、“秘密を守る人”は多大なストレスを抱え込むことになります。なかにはそのせいで精神を病む人も出るでしょう。

 その場合、彼らは患者となって精神科のカウンセリングを受けることになります。自分の気持ちを楽にするために、患者=秘密を守る人は抱えていた秘密を告白したいと思うでしょうし、一方の医師もそれを求めます。しかし、告白すれば治療とは別に「特定秘密の暴露」という“犯罪”も発生してしまうのです。

 患者自身が特定秘密を告白した場合、10年以下の懲役か1000万円以下の罰金刑となります。カウンセラーが意図的に秘密を聞き出した場合も同じ重さの刑罰が下され、同時に患者にも“過失による漏えい”で刑罰が下されてしまいます。

 現実には、こんなことが起こる機会はほとんどないでしょうが“秘密と刑罰”は意外なリスクを生みそうなので、要注意ですね。
 
 ☆よしだ・しん=総合診療科医を経て、現在は精神科医。非常勤医師として、刑務所、少年院、ホームレス支援施設、高齢者の在宅診察などに従事し、精神医療のディープな部分につかる。2009年にはラジオパーソナリティーを務めた。