【生き様に活かす死者の声】土砂崩れの現場から白骨が…異常気象による集中豪雨で年々増加

2020年09月08日 10時00分

土砂災害、ガレキの中の犬(ロイター)

【法医学者佐藤喜宣の生き様に活かす死者の声】 今年は梅雨からの長雨により各地で土砂崩れなどが発生したが、そこから白骨が見つかる事案もままあることだという。法医学者で杏林大学医学部名誉教授の佐藤喜宣氏(71)が明かす“白骨からわかること”とは――。

 地球温暖化が原因とみられる異常気象が、世界中で頻繁に起きています。日本でも集中豪雨による甚大な被害が熊本県を中心に広範囲で発生した「令和2年7月豪雨」など、多雨や豪雨による河川の氾濫や土砂災害の発生が年々増加しています。

 山間部の開発が進んだ影響もあり、土砂崩れや山崩れが多発していることで、2010年以降は被災現場から白骨が出てくることが増えた…と、以前にも少しお話ししました。捜索願が出されていた行方不明者の白骨が出てきたこともありますが、江戸時代は土葬が主流だったこともあるので、かつて墓地だった場所などから白骨が出てくることもあります。

 白骨が一部分でも出てきた場合は、検視官と鑑識が現場に入り、周辺で見つかったものをすべて収集していきます。

 もしも頭蓋部(とうがいぶ)などに傷があったりすれば、事件性が疑われるので、所轄警察から検察庁へ司法解剖手続きの申請があり、私たちに要請が入ります。

 白骨の場合はどんな解剖をするのかと疑問があるかと思いますが、骨自体を切断することもあるので、検案・解剖となります。1人分なのか複数人分なのかを間違えないよう丁寧に骨を並べることから始め、その人の実像に迫っていきます。

 発見される白骨の多くは、骨盤のような大きい骨や、頭蓋骨やあごの骨といった硬い骨、さらには長管骨(ちょうかんこつ)といって大腿骨(だいたいこつ)のような長い骨です。指の骨といった小さい骨は風化してしまったり、小動物が持って行ってしまったりしていることが多いからです。

 男性か女性か、年齢はどのぐらいなのかは、長管骨の形、長さ、太さといった形状から見極めていきます。

 歯が残っていれば摩耗度、治療の有無、治療痕などから年齢も見極めやすく、DNA鑑定により身元特定につながる可能性はあります。治療痕がなかったり、摩耗が激しいとなれば、現代の白骨ではないこともわかります。

 時間が経過している白骨の場合は、科学捜査研究所(科捜研)や科学警察研究所(科警研)で、骨の中に含まれている炭素分子から年代を測定することもできます。

 もちろん事件性があれば捜査対象となりますが、白骨から死因を特定することは難しいのが現状です。

 身元不明の白骨が事件性なしとなった場合、死亡診断書では「不詳の死」とされ、見つかった場所の地方自治体が引き取り、遺骨の保管、埋葬を行って無縁仏となります。

 身元不明のご遺体が発見された場合も同様に「不詳の死」となり、東京都23区内であれば東京都監察医務院の遺体安置冷蔵庫で一定期間保管した後に火葬埋葬し、無縁仏となります。

 ◆佐藤喜宣(さとう・よしのぶ)1949年、東京都生まれ。杏林大学医学部名誉教授。日本歯科大学、広島大学医学部客員教授。東京都と千葉県の児童相談所セカンドオピニオンも務めている。ドラマ「監察医 朝顔」の原作漫画の監修者でもある。