【50代バツイチ女性医療ライター・心肺停止から蘇り日記】コーヒーブレークはおあずけ! その理由は――。心肺停止で倒れ、身体と脳機能に障害が残った50代独身(バツイチ)の女性医療ライターが自らのリハビリを振り返ります。

 リハビリ病院では心身の状態により、行動の制限が変わります。一人で動けるのは入院病棟のフロアのみだったり、回復次第で院内を一人で動けたり、付き添いがあれば近隣への外出、さらに外泊も許されるようになります。私も当初はふらついていたので制限がありましたが、リハビリで筋力が回復するとともに自由度が増し、プチ散歩で地域猫に癒やされる幸運を味わうことができました。

 朝食後にはエレベーターで6階病室から1階エントランスへ降り、自販機でドリップコーヒーを買って、ロビーに置いてある新聞に目を通すのがルーティンになりました。

 ある時、いつものように優雅に過ごしていると、息を切らした看護師さんが駆け寄ってきて、「あちこち捜しましたよ。薬飲み忘れていますからっ」と教育的指導。医療現場では事故につながりかねない、いわゆる「ヒヤリ・ハット」案件なので、看護師さんは必死。食堂では自分のお膳の前に薬を入れる小箱があって、飲み終わったら空袋をそこに戻すのがお約束なのですが、ついうっかり飲み忘れが度々…。いつしかエントランスの受付に、看護師さんから私宛ての電話がかかってくるようになりました(笑い)。退院後に痛感しましたが、服薬管理ってホントに難しいものですね。

 そんなある日、いつものようにドリップコーヒーを買おうとしたら、自販機にまさかの故障の張り紙。私の癒やしが奪われてしまったのです。「だったらしゃーない」と、友人が見舞い品に持ってきてくれたドリップコーヒーを飲めばいいと、食堂にいそいそとカップをスタンバイして行ったのですが、右を向いても左を向いても湯沸かしポットはありません。「おやおや? 売店にはカップ麺とか売ってたよな?」と思い向かってみるもののポットはなし。売店のおばちゃんに「お湯はどこで入れられるんですか?」と尋ねると、「そういえば病棟フロアにはないですね。社員食堂にはありますけど」との答え。「なっ、なんですと? 入院患者はコーヒーも飲めないのか?」と怒りに震えつつ病棟にかけ戻り、さっそく看護師にその理由を問い詰めたのは言うまでもありません。

 リハビリ病院には都か区かわかりませんがいろいろと規定があって、それをクリアしないと湯沸かしポットは置けないそうです。以前はこの病棟の食堂にもポットがあったのですが、やけどを負った人が出たことで禁止になったと説明を受けました。自由にお湯も注げない入院生活の不自由さに改めて涙しました。