【生き様に活かす死者の声】40年で20分の1! 産み捨て減少のウラに赤ちゃんポスト

2020年07月14日 10時00分

【法医学者・佐藤喜宣の生き様を活かす死者の声】法医学者(監察医)で杏林大学医学部名誉教授の佐藤喜宣氏(70)が、「生」と「死」について思いをめぐらす当コーナー。今回は…。

人として生まれ、育ってきて、なぜこんな仕打ちを受けるのか。法医学者として感情移入しないよう心がけ、客観的な視点で検死・解剖を行ってきましたが、やはり子供虐待被害者の解剖には切ない気持ちを抱き、心が痛みます。

 私が法医学者になった1975年は、第2次ベビーブームだったこともあり、赤ちゃんを産み捨ててしまった嬰児殺(えいじさつ)の認知件数は年間約200件ほどありました。2018年の嬰児殺認知件数は10件と年々減少傾向にはありますが、その一助となっているのは「赤ちゃんポスト」の存在です。

 赤ちゃんポストとは、出産してもやむを得ない事情で育てられない赤ちゃんを、匿名でも受け入れてくれる制度で、00年にドイツなどでスタートしました。

両親が育てるのが困難であれば、子供に恵まれずに望む人か、もしくは国が赤ちゃんの面倒を見ましょうという考え方です。日本だとどちらかといえば、子供は親のものという発想ですが。

 04年にドイツの現状を視察された熊本県・慈恵病院の蓮田太二先生の呼びかけで、日本では「こうのとりのゆりかご」と呼ばれ、07年に慈恵病院で導入されてからこれまでに100人以上の命を救ってきました。

 産婦人科医として半世紀以上、母子に寄り添ってこられた蓮田先生は、ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサのお弟子さんでもあり、マザー・テレサも蓮田先生の病院を訪問したことがありました。

 赤ちゃんを預けに来る理由は、生活の困窮だったり、未婚や若年での妊娠だったりと様々です。ひとりで悩み苦しんだ結果、最悪の選択をしてしまうのではなく「こうのとりのゆりかご」のように相談に乗ってくれたり、受け入れてくれる場があれば、子供は犠牲にならなくて済むはずです。

 今後は熊本県だけではなく、関西、関東、東北、北海道といったように全国各地区ブロックごとに1か所ずつ置かれるようになれば、過酷な環境で妊娠をして絶望している女性に、希望の灯を照らすことができます。制度の浸透には、まだまだ高いハードルがありますが、継続して広げていく必要性を感じています。

 子供は親から生まれてきますが、神様からしてみれば、ひとつの人格を持って生まれてきたわけで、未来を担う存在なのです。

(構成=福山純生)

☆佐藤喜宣(さとう・よしのぶ)1949年、東京都生まれ。杏林大学医学部名誉教授。日本歯科大学、広島大学医学部客員教授。東京都と千葉県の児童相談所セカンドオピニオンも務めている。ドラマ「監察医 朝顔」の原作漫画の監修者でもある。