ふつうの風邪を起こすウイルスの15~20%が「コロナウイルス」と言われている。

 そのウイルスの遺伝子が変異したものが、今、騒がれている「新型コロナウイルス」であろう。

 よって、インフルエンザと同じく、コロナウイルス感染症は、風邪症候群の1つと言ってよいかもしれない(だからこそやみくもに恐れず“正しく恐れよ”!)。

 さて、葛の根、麻黄、生姜、桂枝(シナモン)…等々、体を温める生薬より成る「葛根湯」は、約2000年前に作られた漢方薬である。

 ウイルスや細菌などが存在するという概念がない当時の漢方医学では、患者の自覚症状、他覚症状、診察所見から得られる情報(「証」という)によって、薬を処方していた。

 葛根湯を処方する「証」は「項のこり、寒け、発熱、咳、節々の痛み」である。これは、コロナウイルス感染症の初発症状と一致する。かくなる理由より、葛根湯がコロナウイルス感染症の初期症状に効き、中~重症化させない可能性が大である。

 江戸時代の医者に、「かぜには葛根湯」「下痢にも葛根湯」「発疹にも葛根湯」「うつ気分にも葛根湯」…と、どんな病気にも葛根湯しか処方しない医者がいて、落語に「葛根湯医者」としてヤブ医者の代表のように出てくる。しかし、この葛根湯医者はこうした種々の症状を見事に治していたという。葛根湯を熱い湯か(紅)茶とともに服用して、30分もすると、発汗し、項のこり、熱、咳、節々の痛み…が、うそのように抜けていくことが少なくない。

 何しろ、発汗が始まる頃は、体温が約1度上昇しており、一時的に免疫力は4~5倍になる、とされているのだから。

 発熱、咳にくしゃみ、鼻水を伴う症状がある人の風邪(や恐らくコロナ感染症の初期症状にも)には、葛根湯をベースにして、くしゃみ、鼻水に効く成分を加えて作られた「小青龍湯」が効く。

 ◆石原結實(いしはら・ゆうみ)1948年、長崎市生まれ。医学博士。イシハラクリニック院長として漢方薬と自然療法によるユニークな治療法を実践するかたわら、静岡・伊豆でニンジンジュース断食施設の運営を行う。著書は300冊超でベストセラー多数。最新作は「免疫力でウイルスに克つ! なぜか免疫力が高い人の生活習慣」(幻冬舎)。