【生き様に活かす死者の声】かまれると唾液からウイルスに感染 狂犬病の危険動物は野生化したハクビシン

2020年05月19日 10時00分

【法医学者・佐藤喜宣の生き様に活かす死者の声】感染症の恐れがある危険動物とは? 法医学者(監察医)で杏林大学医学部名誉教授の佐藤喜宣氏(70)が、人間とウイルス、動物との関係について語ります。

 新型コロナウイルスの感染源として、コウモリや漢方薬の材料として使用されることもあるセンザンコウといった動物の名前が挙げられていますが、確定的な証拠は見つかっていません。ただ鳥インフルエンザや狂牛病(牛海綿状脳症)など、動物由来と考えられるウイルスがヒトに感染し、流行した感染症はこれまでにもありました。

 日本では、動物由来の感染症の侵入防止対策として、危険性に応じて①輸入禁止②輸入検疫③輸入届け出の3段階の制度があり、それぞれ対象の動物を定めています。

 輸入禁止とされているのは、イタチアナグマ、ハクビシン、コウモリなどですが、これらの動物を食用としている地域もあり、ペットとして飼っている地域もあります。

 オオコウモリは新型コロナウイルスやエボラ出血熱のキャリア動物とされていますが、中国の広東料理では高級食材として扱われ、台湾では屋台で焼いたコウモリも売られています。パラオ共和国やアフリカにもコウモリを食べる習慣があり、私もパラオ共和国に行った時「フルーツバットのスープ」を食べてみましたが、鶏肉のような食感でおいしかったことを覚えています。

 食用とされるオオコウモリは「フルーツバット」と呼ばれ、その名の通りフルーツだけを食べるコウモリです。ミクロネシア諸島に共通する食文化で、グアムやパプアニューギニアでも、コウモリは昔からポピュラーな食材とされています。

 輸入が禁止されている動物の中でも、私が最も懸念しているのはハクビシンです。名前の通り、白い鼻の風貌で、環境適応能力も学習能力も高いので、都市部でも家屋の屋根裏などに居住している被害がよく出ています。

 2014年、台湾では狂犬病のハクビシンが発見されて以降、ハクビシンが狂犬病のキャリアとして恐れられています。狂犬病と聞けば、犬ではないかと思われるかもしれませんが、今は野生化したハクビシンが危険動物とされています。捕まえようとしてかまれると、唾液からウイルスに感染し、長い潜伏期の後に発症します。

 現在、日本での狂犬病の発生は認められていませんが、アジア、アフリカを中心に世界150か国以上に存在し、人間と動物の両方で発症する神経疾患で、一度狂犬病を発症してしまうと有効な治療法はなく、ほぼ100%死亡すると言われており、毎年5万人以上の死者が出ています。

 日本は狂犬病ウイルスの封じ込めに成功しているため、今のところ狂犬病の警告などは出ていませんが、国内に狂犬病のキャリアであるハクビシンがいる可能性は十分あります。台湾同様、ハクビシンを介して狂犬病が発生してもおかしくない状況なのです。

 ウイルスは30億年前から地球上に存在していたとされ、人類誕生は20万年前。ウイルスの発生は自然の摂理であり、他生物の細胞に入り、環境や気象に合わせて変化していきます。人類は天然痘、狂犬病、スペイン風邪など、新たなウイルス感染症が発生するたびに向き合ってきました。

 新型コロナウイルスはまだ不明点が多いのが現状で、一日も早い抗ワクチンの開発が待たれますが、現段階では日頃の衛生管理を徹底し、免疫力を低下させないよう心がけ、ストレスをためない生活を積み重ねていくしかありません。 (構成=福山純生)

☆佐藤喜宣(さとう・よしのぶ)1949年、東京都生まれ。杏林大学医学部名誉教授。日本歯科大学、広島大学医学部客員教授。東京都と千葉県の児童相談所セカンドオピニオンも務めている。ドラマ「監察医 朝顔」の原作漫画の監修者でもある。